入院先からペルー国民へのメッセージを述べるフジモリ元大統領=フェイスブックから
禁錮25年の受刑中に人道的配慮から恩赦を与えられた南米ペルーのアルベルト・フジモリ元大統領(79)は26日、現職中の人権侵害や強権的な政治手法について国民に謝罪するメッセージの動画をフェイスブックに投稿した。フジモリ氏に対しては今も「独裁者」との批判が国内に根強く残る。こうした声に対し、フジモリ氏が公式に謝罪するのは異例だという。
ペルーのフジモリ元大統領に恩赦 健康状態が悪化
フジモリ氏は23日夜に不整脈などの症状で病院に緊急搬送され、動画は病院のベッドの上で撮影された。体に医療器具を付けたフジモリ氏が、ゆっくりとした口調で国民に語りかける様子が映っている。
恩赦の知らせについてフジモリ氏は「大きな衝撃で、極限の喜びと心の痛みがない交ぜになった」と語った。続けて「私の政府の功績がとても歓迎されたことを知っているが、一方で他の国民を失望させたこともわかっている。彼らには心から許しを請いたい」と述べた。
1990年から10年にわたって大統領を務めたフジモリ氏は、テロの鎮圧や貧困対策で評価を得た一方、人権侵害や政権内の汚職などで今も批判の対象であり続けている。フジモリ氏はこれまで自らの功績はアピールしてきたが、批判を受け入れて謝罪することはほとんどなかった。恩赦の決定後、国内で抗議デモが相次いでいることを受け、謝罪の表明に踏み切ったとみられる。
動画では恩赦を決めたクチンスキー大統領に対しては「寛大な処置に心よりお礼申し上げる」と表明。自身の評価を巡って二分した国内の和解をクチンスキー氏と共に呼びかけたいと語った。(メキシコ市=田村剛)