十字架を突きつけられた、窪塚洋介さん演じるキチジロー=KADOKAWA提供
踏んで生きるか。
拒んで死ぬか。
「踏み絵」をはじめとする厳しい迫害に耐えること約250年。信仰を守り続けてきた「潜伏キリシタン」の歩みを伝える長崎と熊本の教会や集落が、今夏の世界文化遺産登録をめざしている。祈りの軌跡は、今を生きる私たちに、何を訴えかけているのだろうか? 遠藤周作の小説が原作の映画「沈黙―サイレンス―」で、長崎の潜伏キリシタンを演じた窪塚洋介さん(38)に聞いた。窪塚さんなら、踏み絵、踏みますか
くぼづか・ようすけ 1979年生まれ。俳優。映画「GO」(2001年)で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を最年少受賞し、「沈黙―サイレンス―」でハリウッドデビュー。神奈川県横須賀市出身。現在は大阪が拠点で、レゲエ・ミュージシャン「卍LINE(マンジライン)」としても活躍中。2児の父。
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「ディープなところ、攻めますね」
新春から、迫害されたキリシタンの歴史を特集すると告げると、窪塚さんはいたずらっぽく笑った。だが話をひとたび「沈黙」に転じると、目が輝いた。
「今でもドッキリだったんじゃないか、夢じゃねえよな、って思いますね」
「沈黙」のオーディションを受けたのは、メガホンをとったマーティン・スコセッシ監督の大ファンだったから。いわく、「DVDの、特典映像まで見るほどのファン」。1回目のオーディションでは、「控室だ」と言われて入った部屋が選考会場で、ガムをかんでいた窪塚さんは案の定、落選となった。だが数年後に再び声がかかり、2回目のオーディションに挑戦。キチジロー役を探していたスコセッシ監督の目に、留まったという。
最初の選考があった2009年ごろまでは、遠藤周作の原作を知っていたわけではなかったが、「キリシタン」を演じたのは、初めてではなかった。
03年公開の映画「魔界転生(てんしょう)」では、農民らが起こした「島原・天草一揆(島原の乱)」の棟梁(とうりょう)・天草四郎を怪演した。舞台は江戸時代初め。天草四郎があの世からよみがえり、妖しげな術を使って、江戸幕府への復讐(ふくしゅう)を企てる――。そんなフィクションだったが、撮影前には一揆の舞台となった原城跡(長崎県南島原市)を訪れ、天草四郎の墓前で手を合わせたという。
「天草四郎が、自分の人生の、…