一本桜温泉センターの家族湯。一見、家庭のお風呂のよう=鹿児島市
西郷隆盛も通った鹿児島の温泉地が発祥という「家族湯」。小さな貸し切り風呂が並ぶ九州以外では珍しい施設。鹿児島県内で150カ所以上あり、大河ドラマ「西郷どん」を機に、PRしようという動きも出ている。
関東出身の記者が鹿児島に勤務し、疑問に思った看板があった。「家族湯」。何のことなのか。家族湯がひしめきあっていると聞いた温泉地を訪ねてみた。
家族湯の歴史を解き明かす資料は少ないが、発祥の地とされているのが、家族湯施設が約20ある霧島市の日当山(ひなたやま)温泉。幕末に西郷隆盛らが頻繁に訪れ、坂本龍馬と妻のお龍が新婚旅行で滞在したと伝わる。
1916年に創業し、ここで最も長い歴史がある「清姫温泉」の料金は1時間400円。4人で入れば1人あたり100円。
アパートのような建物。その一階にドアが並び、入ると脱衣所がある。奥に風呂があり、一見すると家庭にある浴槽のよう。ドアをあけると温泉のむわっとした熱気に包まれた。シャワーからも温泉の湯。少し熱めの湯だが、温度も自分で調節できる。疲れが癒やされた。
清姫温泉の3代目社長、米田知弘さん(56)によると、かつて馬の競り市があった日当山温泉は宿場町として栄えたという。「多くの人が一緒に入れるように」と旅館に「貸し切り風呂」ができ、さらに昭和に入ってからは貸し切り風呂だけが並ぶような施設も生まれ、それが「家族湯」として親しまれるようになったらしい。
同温泉では明治維新150周年…