ドイツ自動車大手の支援を受けた研究団体が、サルや人を使った排ガス吸引試験を行っていた疑いのあることが明らかになった。環境への負荷が大きいディーゼル車の技術改善をアピールするのが狙いだったとされるが、ドイツ政府のザイベルト報道官は29日「実験は倫理的に全く正当化できない」と強く批判した。
ニューヨーク・タイムズ(電子版)が25日伝えたところによると、この研究団体は「輸送セクターにおける環境と健康についての欧州研究グループ(EUGT)」。2014年ごろ、フォルクスワーゲン(VW)、ダイムラー、BMWの資金提供を受け、ディーゼル車の排ガスの安全性を証明するための実験を米国の委託先で行っていた。
実験は密室にサル10匹を入れて漫画で気をそらさせながら室内に排ガスを注入し、健康への影響を調べたという。一方、28日付シュツットガルト新聞によると、同団体はドイツ国内で、25人の男女を対象に、さまざまな濃度の窒素酸化物を吸引させる実験も行っていたという。
米メディアなどによると、VWは「関係者の過ちと判断力の欠如についておわびする。実験で用いられた方法は間違ったものだった」と謝罪。ダイムラーも「このような試みを強く批判する」などとした。
EUGTは07年に設立された。その後、違法ソフトを使って米国の排ガス規制を逃れる不正が独自動車業界で発覚。同団体は17年に解散した。(ベルリン=高野弦)