沢水を凍らせて作った氷瀑。遠方からやって来たカップル(下)が見入っていた=16日、愛知県豊田市稲武町、戸村登撮影
長野、岐阜県境の愛知県豊田市稲武町で、ライトアップされた氷の造形・氷瀑(ひょうばく)が冬の名所になっている。地元住民が家族とともに私有地の森に作り上げ、毎晩楽しめる。8季目となる今季はこれまでで最も大きな規模に仕上がり、見物に訪れる人は絶えない。
1月中旬の午後6時、15基のLEDがともされた。氷をまとった櫓(やぐら)や木々が青、赤、黄、緑など様々な色の光に照らされ、夜の闇に浮かび上がった。見守っていた人たちは角度を変えながらスマートフォンで撮影していた。
標高約550メートルの谷間に築かれた櫓は幅20メートル、高さが6~20メートル。今季は手前の木々や周囲の斜面にも水をかけ、谷全体が氷に覆われているように見える。
水道工事業を営む松井徹さん(69)が2011年1月に始めた。櫓は間伐材約120本を格子状に組んで作った。沢水をせき止めてホースで引き、高低差による水圧で水が自動で噴き出し、散水できるようにした。電柱や照明も自腹で購入、設置した。3人の息子らの手も借りて年々、規模を拡大させてきた。
例年、12月下旬~2月末の午後6時から3時間、ライトアップをする。雨で解けて、期間中に3、4回は作り直す。名古屋から比較的近いとあって、昨季は3500人(いなぶ観光協会調べ)が訪れたという。
今は、けがで入院した松井さんに代わって三男の会社員孝悌(たかよし)さん(37)が管理している。気温次第で散水を止め、ホースが目詰まりしないよう手入れをして回る。「寒い中での作業は大変ですが、こんな県境の町にまで人が見に来てくれることが、おやじにとっても家族にとっても励みになっている」と話している。
氷瀑は大井平公園から歩いて約5分。無料。問い合わせは、いなぶ観光協会(0565・83・3200)へ。(臼井昭仁)