17日に琴奨菊に敗れて3敗となり、国技館を出る稀勢の里=長島一浩撮影
大相撲の横綱稀勢の里が初場所6日目の19日、古傷の左胸を痛めて5場所連続となる休場を決断した。横綱は休場しても地位は落ちないため、数場所休んでじっくり治す手もあるが、それでは「相撲勘」が鈍る。昨年3月の春場所で逆転優勝した後、9月の秋場所以外は出場に踏み切りながら、けがで途中休場の繰り返し。ジレンマに陥る間に、立場は危うくなるばかりだ。
稀勢の里が休場 5場所連続、来場所は進退問題に発展も
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今場所前は連日30~40番の稽古をこなし、久しぶりに自信を持って臨んだはずだった。痛恨だったのは、初日の黒星だろう。新小結貴景勝を土俵際に追い込みながら、仕留め損ねた。親方衆が褒める相撲内容だったが、本人がほしいのは結果だったはず。同じく4場所連続休場から復帰した鶴竜が初日を勝って乗ったのとは対照的に、みるみる内容も悪くなっていった。
休場を届け出た19日朝、東京・国技館で取材に応じた師匠の田子ノ浦親方(元幕内隆の鶴)は「体も、心も作り直さないといけない」と言葉を絞り出した。ただ「休んで勝てるかと言えば……。相撲勘も大事」と言い、現時点で3月の春場所を休場させる考えは示さなかった。
横綱が5場所以上続けて休場するのは、2003年秋場所まで6場所休んだ武蔵丸以来だ。その武蔵丸は、翌九州場所で出場に踏み切ったが、負けが込んで引退に追い込まれている。優勝22度の貴乃花は、02年名古屋まで7場所連続で全休し、翌秋場所で千秋楽まで優勝に絡んで12勝3敗の成績を残した。ただ、続く九州で再び全休。03年初場所が引退場所となった。
稀勢の里に対し、場所後の横綱審議委員会で厳しい意見が出る可能性もある。進退について質問が及ぶと、田子ノ浦親方は「まだ改善の余地がいっぱいある。まだやれる」と言った。1年前、大きな期待を背負って昇進した「和製横綱」に、どんな道が待っているか。(鈴木健輔)