練習中に着地を決める羽生結弦=白井伸洋撮影
「自分が弱いと思えるときは、自分が強くなりたいという意思があるとき。だから、自分は逆境、自分の弱さが見えた時が好き」。16日にフィギュアスケート男子ショートプログラム(SP)に出場する羽生結弦(23)=ANA=は、常々言ってきた。
平昌五輪フィギュア男子SPの結果
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言葉を動きに、動きを言葉に。「孤高の星 羽生結弦」
昨年9月の今季初戦オータム・クラシック(カナダ)で、右ひざに違和感を覚えて4回転ジャンプを4種類から2種類に絞った。しかし、その後言った。「挑戦しないと僕らしい演技はできない。すべて出し切っていない。もっとやりたい」。次の10月のロシア杯から難しい4回転ルッツに挑んだ。そして11月、練習中にルッツを跳んでけがをした。
挑戦は、けがや病気との闘いでもあった。
ぜんそく持ちで薬が手放せず、前回ソチ五輪後も発作が出た。2013年3月ごろに左ひざを痛め、世界選手権に出た後に1カ月安静が必要と診断された。右足首の剝離(はくり)骨折も発覚。昨年11月にも痛めた右足首は元々、緩くなっていた場所だ。14~15年シーズンは中国杯で他の選手と衝突事故、尿膜管遺残症で下腹部を手術。16年は左足甲の靱帯(じんたい)を痛めオフに2カ月間休養した。
連覇がかかる平昌五輪も負傷明けのぶっつけ本番。追い込まれたからなのか。韓国に着いた11日以降、羽生は常に笑顔だ。「逆境は嫌いじゃない。弱いというのは強くなる可能性がある」。今置かれた状況を、楽しんでいるかのようだ。(後藤太輔)