高齢社会の実情を反映する相続制度とするため、民法(相続法)の見直しを話し合ってきた法相の諮問機関「法制審議会」は16日、故人の配偶者が住まいや生活費を確保しやすくなることを柱とした改正要綱を答申した。政府はこの要綱をもとにした民法改正案を3月上旬にも閣議決定し、国会に提出する方針だ。
遺産相続、何がどう変わる? 制度見直しの狙いとは
相続法制の大幅な見直しは1980年以来、約40年ぶり。ただ、法律婚ではない「事実婚」は法の適用から外れたままで、多様化する家族のあり方への対応では課題を残した。
要綱では「配偶者居住権」を新設し、住宅の権利を所有権と居住権に分割。所有権が別の相続人や第三者に渡っても、居住権を持てば自宅に住み続けることができる。居住権は所有権より評価額が低いため、配偶者は遺産分割で現行制度より多く預貯金を相続できる。また、結婚して20年以上の夫婦で、配偶者が自宅の生前贈与を受けた場合、自宅は相続人が分け合う遺産の総額から除外される。いずれも配偶者の住居を確保し、生活費となる預貯金などの遺産を得やすくする措置だ。
このほか、相続の権利がない親族が介護などに尽力した場合、故人の子らの相続人に金銭を請求できる制度の新設も盛り込まれた。(小松隆次郎)
相続制度に関する改正要綱の主なポイント
・所有権を取得しなくても自宅に住み続けられる「配偶者居住権」を新設
・配偶者が生前贈与を受けた自宅は遺産分割の対象外に
・6親等以内の親族(いとこの孫らまで)が介護などに尽力した場合、相続人に金銭請求可能に
・遺産分割前に預貯金から生活費などの引き出し可能に
・遺言書の財産目録はパソコンの印字でも可能に
相続制度見直し後の課題
【配偶者居住権】
内容 評価額が所有権より低く、譲渡不可
課題 評価額を算定する方法の明確化
住めなくなった際の権利の処分手続き
【介護などに尽力した親族の金銭請求】
内容 故人の財産維持などに貢献した親族が相続人に金銭を請求
課題 請求を認める基準の明確化
【内縁、事実婚(LGBTの人を含む)】
内容 夫婦同様に暮らしても相続対象外
課題 相続の対象外にしたままでいいか