お墓で困っていることは何ですか? “最後のすみか”ともいえるお墓。遠く離れた故郷にあって守れないという人もいれば、死んだあとまで夫(妻)の家族と一緒なんて嫌だという人もいます。遺骨は自然にかえしてほしいというお墓不要論も聞こえます。これまでの家のお墓から、人それぞれの形に変わりつつあるお墓のあり方について、みなさんと考えます。 【アンケート】お墓どうしますか? 自分だけなら不要だが お墓についての様々な意見や体験がアンケートに寄せられました。 ●「両親の墓は遠く、自分自身の病気などでずっと行けません。故郷に住む親戚などから墓参りに来ないのかと責められることもありますが、お墓参りは誰のためなのか疑問を感じます。2人姉妹ですが、今は疎遠で今後の墓をどうするのか話す機会もなく、重たくのしかかっているのが現状です。遠くにいても、大好きだった両親のことは常に想(おも)っています。私は、マンションに合う小さな仏壇を買い、両親の好きだったお菓子やお花を供えて写真を見ながら手を合わせます。想(おも)う人のところに来てくれると信じて、それでよしとしています」(熊本県・60代女性) ●「田舎から出て東京に根を下ろした長男です。自分だけなら墓は不要と思いますが、田舎にある先祖代々の墓まで自分の決断でなくしてしまうほどの意気地はありません。かといって田舎の墓に入るつもりもありません。自分の子どもに遠方の墓の墓守をさせるわけにいかないので。やむなく東京に墓を買って改葬する覚悟を決めました。近くにある寺院墓地が理想ですが、将来子どもに檀家(だんか)としてのもろもろを無理に押しつけたくありません。熊谷にある檀家制度を廃止した寺が話題ですが、もう少し近くにそのような寺あれば、必ずそこで墓を買うと思います。私のような立場の者はきっとたくさんいると思うので、そのようなお寺が増えてくれることを願っています」(東京都・40代男性) ●「配偶者は英国人で彼の実家にお墓はありません。私も個人的には生きている人間がお墓に束縛されるのには反対です。法外な諸経費にも理解できませんが、恐らくこの国のほとんどの方がそんな私を理解できないでしょう。両親のお墓がありますが、お墓の存在そのものに疑問があるので、行きません」(大阪府・50代女性) ●「祖父のときは友人や親戚がたくさん葬式に来てくれたが、自分には仲の良い友人はそれほどいないし、結婚したいとは思っていない。そうすると私が死んだときには、姉やその家族にもろもろの費用を負担してもらうことになるかもしれない。など考えて私は永代供養墓に入れてもらうのが良いと思った。父方の先祖の墓は浜松市にあるのだが、父が死んだらその墓は、今住んでいるところに作られると思う。父の兄弟も浜松には住んでいない。どうすればいいのか、と思っている。将来、姉も自分も別の場所に住むことになるかもしれない。そうなると両親の墓と母方の祖父母の墓をどうするかという問題もある」(埼玉県・10代男性) ●「別に主人の実家のお墓参りくらいしてもいいけど、自分が入るのはイヤだわぁ。死ぬ時くらい1人でいきたいなぁー。前、テレビ番組で誰かが言ってたけど、ダンナの家の先祖代々の墓なんて、知らない人ばっかりで、死んでまで肩身の狭い思いをするのはイヤだって。まさにそれですね。仲のいいお友達(墓友?)というのもあるみたいだけど、人間、絶対最初と最後は1人だと思うんだよね。完全に仲良しでケンカしない人なんてあり得ないしさ。月にでも埋葬してほしいわー。で、月が昇って来たら、月に向かって手を合わせてもらえばお墓参り完了! 子供たちもお手軽でいいんじゃないかなーって」(茨城県・40代女性) ●「私たち夫婦は別姓で生活しています。だから墓石には『○○家之墓』と刻まず、好きな言葉とかデザインしたい。本当は、墓も必要ないと思う。しかし、自分が父親を亡くした時には、法事や墓参りなどでだいぶ気持ちの整理がついたことを考えると、娘たちがおばあさんになる頃くらいまでは、亡き親をしのぶよすがとしての墓が必要なのかなと考えます」(東京都・50代女性) ●「私たち夫婦には子供がいないので、個人の墓はいらない。私個人は散骨か永代供養しか考えていない。法定相続人のめいとおいに迷惑だけはかけたくないので、2人に残してあげられる金銭以外の『物』は何も残したくない。夫の唯一の兄弟は未婚で子供がいないので、年齢が一番若い私が嫁ぎ先で最後に生き残ると仮定して、義父母と義弟と夫の墓守は私で途絶えることを考えると、嫁ぎ先の墓じまいも視野に入れなければならない。私個人は嫁ぎ先の墓(車で3時間かかる)には絶対に入りたくないし、火葬を含め契約している成年後見人に全てお任せし、とにかくめいとおいには手間をかけないように今から準備している」(東京都・40代女性) ●「子が親の葬儀をしたり墓参りするって、ごく自然のことだと思うんです。なにを騒いでるんでしょう?墓は遺族のためでなく、純粋に死者のためにあります。そこには死者への丁重な想(おも)い。日々の報告、感謝、道徳など。死者と生者が幸せになるためのエッセンスがたくさん入ってるんです。そして、今を生きる智慧(ちえ)も。墓参りって、ほんとに美しい日本文化ですよ。マスコミの皆さん。死を馬鹿にしてませんか? 死を軽く見てませんか? 表面の現象ではなく、背景にある孤独を取材してください。現代人は死んでも生前のままだから、苦しまないといけない。仏教では仏さま(悟りを開いた存在)となるんです。救ってやって下さい」(大阪府・50代男性) ●「私はまだ20代ですが結婚をする気がなく、今まである先祖代々のお墓を移動して、私の死んだ後に管理してくれるところにお願いしたいと考えています。結婚せず子供のいない人や身寄りのない人たちのお墓の管理がどのようになされていくのか気になっています」(東京都・20代女性) ●「先祖代々の墓に私が入るとしても、そのあとは誰もいないので、両親がなくなって七回忌が済んだくらいで墓じまいしようと決めている。自分はパートナーと2人の墓を作り、その後永代供養に移してもらえるように生前に契約しようと思っている。パートナーは自身の家の先祖墓に入りたければ、分骨もあり得るかなぁ」(岡山県・30代女性) 「家」から「個人の選択に」 「あなたの実家の墓に入ることは選択肢にないから」。都内の会社員の女性(31)は昨夏、夫に伝えました。一昨年に結婚。夫の家の墓に行ったことはなく、夫の親にも数回しか会っていません。当然だと思って口にした言葉でしたが、夫は驚いたような表情を浮かべ、「じゃあ自分も考えないと…」とつぶやいていました。 「なぜ結婚したら夫の家の墓に入らなければいけないのか」「家と結婚するわけじゃない。墓と結婚は別の問題」と幼い頃から思っていました。夫の両親とはうまくいかず、夫方の墓に入ることへの抵抗感が募っていました。夫のことは大切ですが、「死んでしまったら生身の人間の関係ではないのだから、どこの墓に入っても、墓がなくてもかまわないのでは」と考えています。自身は散骨に関心があり、インターネットなどで情報収集しています。 「墓をめぐる家族論」などの著者でNPO法人エンディングセンターの井上治代理事長は、「夫の家の墓に入るということが当然ではなくなってきている」と指摘します。2000年ごろ、井上さんの周りで「夫と同じ墓に入らない」と選んだ人の多くは、夫の親との関係がうまくいかなかったり、夫の実家で肩身の狭い思いをしたり、「『家』意識に押しつぶされた人が、墓を別にすることで逃れようとしていました」。それがだんだんと「個人の選択」になってきており、「夫婦や家族がお互いの意思を尊重し、結果的に夫と別の墓になった」という人が増えているそうです。「夫が妻の墓の証人になるケースも珍しくない」といいます。永代供養墓などの「継承しない墓」が増えたことも、女性の選択肢を広げたと分析しています。 井上さんは「家制度がなくなっても、『代々続いてきたものを、誰かが継いで守る』という家意識が色濃く残っていたのが墓でした。それがやっと、変わってきています」と話しています。(田中聡子) 墓じまい終え さっぱりした 東京都の福嶋圭子さん(82)は、10年ほど前に静岡県にある先祖の墓を「墓じまい」しました。戦時中、戦禍から逃れるために祖母と疎開し、3回も墓を移したそうです。同じ宗派の墓を探して寺を回り、お金を払い、やっとお墓を建てたと思ったらまた移す。そんな祖母の苦労を間近で見て、「お墓は大変なもの、お寺はいやなところ」という意識がずっとあったそうです。 20歳の頃、祖母が亡くなり、静岡の墓に埋葬して、妹と東京に戻りました。それ以来、戦争のつらい思い出がある静岡からは次第に足が遠のくようになり、めったにお参りにも行かなくなりました。年をとり、自分の死も意識するようになると、墓は重荷になっていき、妹と相談し、墓じまいを決めました。 先祖の骨は、寺の合葬墓に埋葬してもらいました。「お気持ちでいい」と言われ、10万円ほど払いました。事がすむと、「さっぱりしたいい気分」になったといいます。 寺や墓への抵抗感から、「自分は自分らしく死にたい」とずっと考えてきたという福嶋さんは、8年ほど前に都内の樹木葬の墓地を見学し、「ここだ」と感じました。広がる芝生の上を小鳥が飛び交い、桜の木もあります。これまでの暗いお墓のイメージとはまったく違っていました。2年後、20万円で自分の区画を購入しました。 息子には、「骨を持って行ってくれるだけで、忘れてくれていいし、お参りもいらない」と言ってあります。最近、息子の妻の父親が亡くなり「ボート部だったから海洋散骨した」と聞きました。気持ちがふっと明るくなりました。「みんな、自分の好きにしていいんですね」(田中聡子) 「継ぐ人いない」全国から相談 NPO法人「やすらか庵」代表の清野勉さん 千葉市のNPO法人「やすらか庵(あん)」は、無縁仏を増やさないため、墓じまいに関する相談に応じています。代表で、真言宗の僧侶でもある清野勉さん(58)は「相談は、全国から毎日のようにきます」。 最も相談が多いのは70代。「後を継ぐ人がいない」という理由が大半ですが、夫婦それぞれの実家に墓があるなど「数を減らしたい」という人も。散骨のサポートを15年前から始め、墓じまいの要望が大きく増えたのは7、8年前といいます。いまでは重機を自前で用意し、実際に墓を撤去する作業も請け負っており、昨年は50件ほど手がけました。 注意点は、お墓がどこにあるか、遺骨をどうしたいかによって異なります。公営墓地であれば、届け出をして許可をもらい、撤去するだけです。ただ、同じ墓地にある合葬墓に移したいなら、申し込みや合葬の時期が決まっており、墓じまいもそれにあわせることになります。 民間の墓地や寺は、利用できる石材店が指定されていることが多々あります。「どうしても見積もりが高くなりがちですね」と清野さん。 寺の場合、ほかにも金銭にからむ相談が目立ちます。墓じまいを申し入れたら数百万円の「離檀料」を求められた、同じ寺の永代供養墓を勧められ一体200万円と言われた――。相談を受けて清野さんが寺と交渉することも多く、離檀料を半額以下にしてもらった例もあるそうです。 とり出した遺骨を自宅に持ち帰ることは基本的に認められません。散骨する場合、改葬の届けが必要かは自治体によって異なり、船に乗って一緒にまく形だと通常は十数万円。格安の業者も出てきましたが、「岸の近くでまくなど、よくない業者もいます」。墓の撤去費用は、墓の大きさや作業のしやすさなどで変わり、やすらか庵の場合は「通常の墓で20万~30万円程度」だそうです。 清野さんは「みなさん、墓じまいをすると『肩の荷が下りた』と言われます。ただ、ご先祖とのつながりは消えません。感謝の思いを忘れないでほしいです」と話しています。(山田史比古) ◇ |
「あなたの家族と一緒は嫌」驚く夫…自分の形のお墓とは
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