男子回転1回目、滑走する湯浅直樹=細川卓撮影
(22日、平昌五輪アルペンスキー男子回転)
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危機迫る日本アルペン界 迷うエース湯浅、若手も育たず
特集:平昌オリンピック
言葉を動きに、動きを言葉に。「孤高の星 羽生結弦」
先月末、左ひざの遊離軟骨を取り除く手術をしたため十分な練習はできていない。3回目の五輪。アルペンスキー男子回転の湯浅直樹(スポーツアルペンク)は1回目で首位から5秒以上遅れ、ぼうぜんとしたまま頭を抱えた。
「五輪のマークを見ると正直、苦しくなる。俺を苦しませたものだから」。日本のエースが、重苦しい思いをはき出した時がある。
五輪デビューは2006年トリノ大会で、7位入賞と華々しい。だが、4年後に2枠の代表枠をめぐり、佐々木明、皆川賢太郎との選考レースに敗れたときは心の静め方が分からなかった。とことん真っすぐな性格。のちに撤回したが、引退とも受け取れる言葉をブログに書き込んだ。
身体能力を生かし、果敢に攻めるスタイルは夢を抱かせてくれるが、けがと背中合わせだ。腰痛が癒え、雪辱を誓ったソチ大会は直前に右足首を骨折。一か八かの滑りでは勝負にならなかった。昨季に復活して迎えた今季は、10年以上前に軟骨を欠いた左ひざが持ちこたえられなかった。
それでも、177センチと小柄なアルペンレーサーは戦うことをやめない。この34歳の座を脅かす若手が見当たらないのだ。湯浅がトップレベルでなくなれば、日本アルペン界の「終わりの始まり」とささやかれる。「五輪の悔しさは五輪でしか晴らせない」。イタリアの五輪金メダリスト、アルベルト・トンバに魅せられて世界一をめざしてきた男が勝負に挑んだ。(笠井正基)