米財務省は23日、北朝鮮による制裁逃れの密輸に関わった中国や香港などの27の海運会社と28船舶、個人1人を新たに制裁対象にしたと発表した。海上で石炭や石油などの積み荷を移し替える密輸を封じ込める狙いがある。トランプ大統領は23日の演説で「対北朝鮮制裁では最も厳しいものだ」と語り、核開発に使われる燃料や資金源を断つ考えを示した。
トランプ氏の長女、イバンカ大統領補佐官がこの日、平昌(ピョンチャン)冬季五輪の閉会式に出席するために訪韓し、文在寅(ムンジェイン)大統領と会談した。このタイミングで制裁を発表することで、トランプ政権として北朝鮮に核放棄させるための「最大限の圧力」政策を緩めない方針を明確に打ち出し、五輪をきっかけに北朝鮮と融和路線に傾く韓国側を牽制(けんせい)する意図もありそうだ。
財務省によると、今回対象となった海運会社は、北朝鮮のほか、香港、中国、台湾、シンガポールなどに拠点を置く。ロシア企業から北朝鮮に石油を密輸した台湾人1人も対象となった。米国内の資産が凍結されるほか、米国企業との取引が禁止される。船舶には、タンザニアやパナマなどの船籍も含まれていた。北朝鮮が密輸の発覚を逃れるために偽装していたものとみられる。
これらの船舶は、北朝鮮産の石炭を輸出する一方、石油精製品を輸入していたとされる。1回あたり550万ドル(約5億8千万円)相当の石炭を運搬していたという。(ワシントン=峯村健司)