互いを非難してきた2人の首脳がともに朝鮮半島の平和、非核化を打ち出した12日の米朝会談。行方を注視してきた人たちは、合意の実現を願った。
広島の被爆者は
米朝の共同声明で、「朝鮮半島の完全な非核化」が確認された。
「朝鮮半島の平和構築が実現するのではないかと希望と期待で胸が高鳴る」
母親の胎内で被爆し、北朝鮮の被爆者団体とも親交がある広島県朝鮮人被爆者協議会理事長の金鎮湖(キムヂノ)さん(72)=広島市西区=は、そう語った。昨年7月に国連で採択された核兵器禁止条約にも触れ、「アジアと全世界の核兵器廃絶に大きなインパクトを与える。被爆国の日本も条約に署名・批准してほしい。それが被爆者の願い」。
爆心地から約2キロで被爆した在日韓国人の李鐘根(イジョングン)さん(89)=同市安佐南区=は「世界に約束したもの。両国とも誠実に実行してほしい」と注文を付けた。
原爆投下翌日、家族を捜して広島市に入って被爆した豊永恵三郎さん(82)=同市安芸区=は広島や長崎で被爆し、韓国に戻った被爆者たちを40年以上、支援し続けてきた。国交のない北朝鮮の被爆者の実態把握は進んでいない。
「終戦協定を経て南北の交流が始まれば、手つかずだった北朝鮮の被爆者たちに手を差し伸べることができるようになる」と期待を寄せた。
ICANのメンバーは
ただし、共同声明には、非核化に向けた具体的な道のりは記されていない。
昨年のノーベル平和賞を受賞した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」のメンバーはシンガポール入りして会談の行方を注視した。ベアトリス・フィン事務局長は声明で「内容のない合意に署名するよりも、真に国際法に基づく文書、すなわち核兵器禁止条約に署名すべきだ」と批判。「朝鮮半島を完全に非核化することができるのは、国際法と既存の条約に基づく枠組みによるプロセスのみだ」とくぎを刺した。(松崎敏朗、宮崎園子)