指定暴力団の本拠地が全国最多の五つある福岡県の暴力団勢力(組員や準構成員)は2040人(2017年末現在)となり、4年連続で過去最少を更新している。指定暴力団工藤会(北九州市)の最高幹部らを相次いで逮捕した「頂上作戦」に加え、組織を離脱した組員(ヤメ暴)の就職支援など、社会復帰を後押しする制度も奏功している。
県警によると、県内の勢力は07年の3750人をピークに年々減少。現在、最大勢力の工藤会は14年9月の頂上作戦などを踏まえ、08年のピーク時(1210人)から610人まで半減している。工藤会の組員360人の約半数は服役、勾留中という。
県警の支援を受けて離脱する組員も増えている。15~17年に計379人が辞めた。30~40代が7割近くを占めており、家族や自身の将来を理由に離脱した組員が半数に上っている。繁華街の飲食店への立ち入りを禁じる「標章制度」なども浸透。県警幹部は「ヤクザの看板で生活できなくなってきている」とみる。
組員らの減少の背景には、全国的に珍しい支援策もある。県は16年4月、ヤメ暴を受け入れた企業に対し、1人あたり年間最大72万円の給付金を支給する制度を開始。組からの報復を恐れるヤメ暴が県外で就職できるよう、各警察が就職情報などを共有する枠組みは27都府県まで広がった。
新年度からは金銭的に困窮したヤメ暴らに、県外企業の採用面接に向かうための旅費や、報復などから一時的に避難する際の宿泊費を助成する制度も始まる。
一方、県警は今春の組織改編で、従来の工藤会だけではなく、県下全域で暴力団の資金源対策に取り組む企業情報係を組織犯罪対策課に新設。対策を強める。
県警幹部は「金の流れが分かれば新たな攻め方もできるだろう。事件検挙をさらに進めつつ、組織に入る人を減らし、出る人を増やして、暴力団の力を弱めていきたい」と話している。(稲垣千駿)