俳優の志尊淳さん=山本和生撮影
3月8日は、国連が定めた「国際女性デー」です。男女格差が大きいとされる日本を、若い人たち、とりわけ女の子たちが、性別にとらわれず生きることができる社会に――。俳優の志尊淳さん(23)は「自分しか出せないものを発信して」と語ります。
「誰もがどこかでマイノリティー」同性愛公表の国会議員
国際女性デー特集「Dear Girls」
◇
甘い物が大好きなんですけど、テレビとかでそう言うと、「女子力高い」「女の子みたい」と言われるのが、あまり好きじゃないです。好きな食べ物は、人それぞれじゃないですか。
「告白するのは男から」とか、そういう世間の考えで、よく分からないと思う部分があります。「それって女性が好きだよね」「男性だからこうするよね」という考えは「想像」でつくられていて、それがおのおのの世界を狭めていることがあると感じます。
高校生ぐらいの時は、「男らしい人」がモテるみたいのはあって、「こうした方が男らしいのかな」とか考えていた時期もありました。でも、そういうのって持たないと思うんですよ。僕自身は、自分はそのままでいいし、好きなタイプに人を当てはめたいとも思わない。それぞれの良さがあると思うからです。どこかに、そのままでいる自分を「いいな」と思ってくれる人がいると思う。僕は自分の人間力を上げていきたいです。いてくれるだけで安心できる男性に憧れるので、そういう人間力をつけたいです。
本当に微力ですけど、発信には気を付けたいと思っています。ドラマ「女子的生活」(NHKで1月に放送)で主人公の(心と体の性が一致しない)トランスジェンダーの役を演じた時には、特に気を付けました。言葉にピンとくるようになって、例えば、「作品で女装したんですよね?」と聞かれたら、「あ、女装じゃなくて」という所から始める。そういうのを一つ一つやることが大事だと思う。
僕が「これぐらいはいいだろう」と妥協して発信することによって、どれだけの人が嫌な思いをするかと考えると、性的マイノリティーを演じる責任や、発信することの責任を感じます。「役者は自由奔放でいいんじゃないか」という意見もあると思うんですけど、僕は責任を一つ一つに感じます。「優等生すぎる」「面白くない」と言われますけど、そういう性分なんです。自分はそう簡単には変えられないし、変える必要もないんじゃないかと思っています。
「女子的生活」では、「(性的マイノリティーを)許せない」という声も届きました。でも、そう生まれてきたのであって、他人が「許す」「許さない」というものじゃない。そういう風に思ってくれる人が一人でも多くなれば、という気持ちで必死にやりました。このドラマで初めて性的マイノリティーを認識した人にとって、象徴のような存在になるので、生半可にはやれないですし、役作りはすごく悩みました。
10代の時は、「自分はこれが正しい」と思っているのに、人に合わせたり、多数派の意見に流されたりということがあると思います。でも僕は、自分に無いものを持っている人がすごく好きでした。自分じゃ考えられないことや、同じ考えでも考えの先がある人や、考えを別の形で表現している人にすごく魅力を感じるんです。
全通り一緒の人はいない。自分にしか出せないもの、自分にしか考えられないことがある。それを発信して欲しいです。男女問わず、いろんな考えの人がもっと出てくれば、社会は絶対に変わるし、「想像」やイメージも多様化していくと思います。
僕自身もどんどん発信していきたい。「志尊が発信しているんだったら、私もしてみようかな」と感じてもらえたらと思っています。ただ、発信には影響される人がいると思うので、絶対に責任を持った方がいいと言いたいです。(聞き手・湊彬子)
しそん・じゅん 1995年生まれ。東京都出身。俳優。4月に始まるNHK連続テレビ小説「半分、青い。」で、ゲイの青年藤堂誠(通称・ボクテ)を演じる。