クラウドファンディングで作った特製のシットスキーで1月の国内大会に出場した新田のんの=北海道旭川市、加藤諒撮影
9日開幕の平昌パラリンピックのスキー距離に初出場する新田のんの(21)=北翔大=には心強い「相棒」がいる。特注のシットスキーだ。体に合ったものを作るため、地元・北海道の産官学が連携。資金はインターネットを通じたクラウドファンディングでまかなった。
小児がんが原因で下半身にまひがある。2015年12月にシットスキーに初挑戦し、車いすでは入れない山中を駆け抜ける疾走感に魅了された。だがスキー距離の座位の選手は国内にわずか。男子選手からの「お下がり」は大きすぎて座席と太ももの間に両手が入り、「靴でたとえると、大きな長靴を履いて走るような感じだったと思う」。
悩みを聞いた北海道庁経済部を中心に16年に立ち上がったのが、「スペシャルシットスキー新開発」計画だった。北見工業大が動作分析をし、力を伝えやすい座席を設計。車いすを作る社会福祉法人クピド・フェア(岩見沢市)に製作を依頼することになった。
最後の課題が30万円という製作費。海外遠征費を含め、120万円の寄付をインターネットで呼びかけた。すると、わずか1カ月で140万円が集まった。16年12月に特注品が完成。昨季のワールドカップで自己最高の4位に入るなど、成果はすぐに出た。
「支援してくれた人にいい報告をしたい」と筋力強化に一層励んだ。二の腕は太く、肩幅は広くなり、1年前の服は入らない。世界トップはまだ遠いが、2年前に「想像もしなかった」という舞台には届いた。出場は14日のスプリントクラシカルのみ。相棒の力も証明しにいく。(菅沼遼)