NPO法人による障害者向けの就労支援について、国税庁が「原則、収益事業で納税義務がある」との見解を示した。全国の小規模作業所に不安が広がり、課税を不服として争う法人もある。作業所などの全国団体「きょうされん」(事務局・東京)は近く、国税庁長官に撤回を求める。
障害者就労支援は収益事業? 突然の課税、NPOは困惑
国税庁は昨年7月、ホームページで見解を発表。こうしたNPO法人は障害者と契約して役務を提供し、利用料を受け取る「請負業」との判断を示した。
税法上、収益事業は「継続して事業場を設けて行われるもの」で、請負のほか、物品販売、製造など34業種に限られる。国税庁法人課税課の担当者は「NPO法人の障害福祉サービスは以前から収益事業だが、複数の税務署から相談があり、見解を示した」と話す。
広島市の「つくしんぼ作業所」は国などの給付を受け、就労困難な知的障害者が家にこもらないように働く場を提供。19~46歳の男女18人がクッキーを作るなどしている。2007年にNPO法人となった際、税務署から「収益事業でない」と説明を受けた。だが15年に一転して収益事業と指摘され、法人税や無申告加算税など過去3年分で計約200万円を課された。
昨年4月、「運営はボランティアの支えもあり、福祉が目的で収益事業ではない」と、広島国税不服審判所に税の取り消しを求めて審査請求した。今月にも結論が出る見通しだ。厚生労働省によると、つくしんぼ作業所のようなNPO法人は全国で約3300(16年10月現在)に上る。
きょうされんは昨年12月、障害福祉サービスを実施する加盟の507のNPO法人にアンケートを実施。回答した231法人のうち、法人税を申告したとするのは77法人だった。多田薫事務局長は「資金力のない法人は課税で圧迫され、福祉サービスが低下しかねない」と話している。(村上潤治)
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〈NPO法人と課税〉 NPOとはそもそも非営利団体のこと。特定非営利活動促進法により設立されたNPO法人は株式会社と違い、毎年の利益や解散する時の残余財産を構成員に分配できないが、利益を上げる事業は行える。法人税は所得に課税するので赤字のNPO法人は課税されない。所得が年800万円以下のNPO法人の税率は中小企業と同じ15%。