投球練習をする創成館の七俵(右)と川原の左腕2人
創成館(長崎)のブルペン。「ナイスボール!」という捕手の声は、簡単には響いてこない。
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捕手の平松は「いいことばかり言っては投手も強くならない。ブルペンを緊張感あるものにしています」。投手が決め球をコースに投げる。質を見極め「簡単に見逃されるボール球だぞ」ときっぱり。自らも球をこぼせば素早く拾って送球までイメージする。
こんなブルペンで底上げされた投手陣は最速140キロ前後がそろい、昨秋の九州大会を制した。明治神宮大会は明徳義塾(高知)に敗れて準優勝だったが、準決勝では3人の継投で大阪桐蔭を7―4で破った。
上背がある左腕エース川原の大阪桐蔭戦は、救援の4回3分の2で無失点に抑えた。4番根尾に変化球で空を切らせるなど5奪三振。「配球を間違えなければ戦える」との手応えが残った。
この一戦で目覚めたのがやはり左腕の七俵(しちひょう)だ。「もう1人左が必要」と考えた稙田(わさだ)監督に先発に抜擢(ばってき)されると、これが吉。強敵相手で開き直れた。「これまで試合で縮こまっていたけど、押せる場面もあった」と七俵。伸びのある直球を生かす感覚をつかんだ。右は戸田、伊藤らがおり、投手起用の幅が広がった。
九州三菱自動車の選手、監督で20年余りを過ごした稙田監督は、細部をゆるがせにしない。守備はグラブの出し方、ステップから。フリー打撃は走者がいる状況を設定し、好きには打たせない。心理カウンセラーの資格を取り、選手の内面にも心を配る。怒られては不満を顔に出していた主将の峯は「監督さんは言葉がしみてくる」。全体のためだと言をつくして説かれ、役割を自覚していったという。
過去2度の選抜は初戦敗退。「春1勝」が合言葉だが、丁寧なチーム作りで、さらに上をうかがう準備は整っている。(隈部康弘)