中谷コーチ(左)とティー打撃に励む智弁和歌山の林
「誰かが止めなあかん」。2月中旬、智弁和歌山の高嶋監督は、仁王立ちで練習を見守りながらつぶやいた。頭の中には“天敵”が、視線の先にはフルスイングをする林晃汰(2年)がいた。
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この左打者は、強打の名門校で1年生から主力を担ってきた。昨夏の甲子園で注目の打者に名を連ねる。3番三塁で先発した1回戦の興南(沖縄)戦では逆方向の中堅左へ本塁打を運び、非凡さを示した。
高嶋監督も、林も意識するのが「最強世代」と呼ばれる大阪桐蔭だ。林は中学時代に進学を目指した時期もある。だが、「倒すため、戦いたくて、智弁に来た」。
思惑通り昨年は春の近畿大会、夏の甲子園、秋の近畿大会で大阪桐蔭とぶつかった。結果は全敗。春夏通じて歴代最多の甲子園64勝(33敗)を誇る名将も、「初めて」という年間公式戦3連敗だった。
監督が「痛かった」と振り返るのが、林の状態だった。春は腰の分離症で出場できず。夏の2回戦での対戦では右ひじの疲労骨折の影響で代打での1打席だけ。秋は右ひじにボルト2本を入れた手術後だったため、ボールボーイ。林は決勝、0―1の敗戦を見守ることしかできなかった。「あの悔しさは、忘れられない」
この冬、例年よりも試合形式の練習が増えた。監督の、この選抜にかける思いの強さだろう。3番に復帰した林は、そこでアーチを量産している。指揮官はうなる。「ひどいときは3打席連発とか。(選抜で)3、4試合やれば(本塁打)5本はいくと思う」。主将で4番を打つ文元洸成も「やっぱり頼りになる存在」と言う。
選抜の目標は優勝。宿敵との再戦も見据え、林は言う。「うずうずしてます。自分が打ったら勝てるかな、って感じですかね」(小俣勇貴)