入場行進する「中立のパラリンピック選手」たち=9日午後、平昌五輪スタジアム、加藤諒撮影
華やかな歓迎の式典で、その国の名がアナウンスされることはなかった。
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特集:平昌パラリンピック
国家ぐるみのドーピング問題を抱えるロシアだ。9日の平昌冬季パラリンピックの開会式を取材して、2月の五輪開会式とのギャップに気づかされた。
「中立のパラリンピック選手(NPA)」。入場行進の際、個人資格で参加が許された30人のロシア選手はそう紹介された。
ドーピングとは無縁と判断された一団は、グレーの無地のコートを身にまとった。華やいだ他国の行進とは対照的に、ボランティアが掲げるパラリンピック旗に続いて淡々と歩いた。
「世界が注目する中、国際パラリンピック委員会(IPC)はクリーンで開かれたスポーツに対する、いかなる脅威にも立ち向かいます」。IPCのパーソンズ会長は、開会式のスピーチでも高らかに宣言した。
1カ月前の五輪開会式の光景を思い出す。「潔白」とされた選手たちは「ロシアからの五輪選手(OAR)」と呼ばれた。観客席でロシア国旗を振る姿も目立った。だが、この日のパラリンピック開会式では、ロシア国旗の持ち込みまで禁じられた。
IPCは2016年リオ大会でロシア選手を全面的に締め出した。それに比べると、個人資格参加に門戸を開いた平昌大会は寛大に映るかもしれない。
だが、「ドーピングを大目に見たら、パラリンピックの信頼は失墜する。腐敗を許すことは死を意味する」。昨秋までIPCを率いたクレーブン前会長のその意思は貫かれていた。
貴賓席には国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長の姿もあった。五輪閉幕の3日後の先月28日、完全な問題解決を見ないロシアへの資格停止処分を解除した組織のトップの目に、パラリンピック開会式はどう映っただろう。(高野遼)