応援メッセージが書かれた日の丸を掲げる村岡桃佳の父、秀樹さん=10日、韓国・平昌
アルペンスキーの村岡桃佳(21)=早大=が11日の女子スーパー大回転座位で、銅メダルを獲得した。ともに歩んできた父にメダルをかけてあげたい――。そう願って臨んだ大舞台。前日の滑降の銀に続く今大会2個目のメダルとなった。
村岡桃佳が銅 女子スーパー大回転 自身二つ目のメダル
平昌パラ、アルペン村岡桃佳が銀 日本選手メダル第1号
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スーパー大回転、村岡は勢いよく飛び出した。荒れた雪面にスキーがはじかれ、体が浮く。観客席で見守っていた父の秀樹さん(48)は思わず「やばい」と声を上げた。それでも最後まで滑りきり「ほっとしました」。結果は銅。「なんとか踏みとどまりました」と秀樹さんは安堵(あんど)の表情をみせた。
村岡は4歳の時、原因不明の病気で突然足に力が入らなくなった。「いつか歩けるかも」。秀樹さんは、けなげに信じる娘の姿を見るのがつらかった。友人とかくれんぼをしても、車いすは隠れる場所がない。なのに、周囲が気を使ってなかなか見つけてくれなかった。村岡は「対等に扱ってほしい」という思いを募らせていた。
車いすの生活になった娘を少しでも理解したいと、秀樹さんは車いすを使ったスポーツを始めた。車いすテニスや車いすバスケ、そりを使ったパラアイスホッケー。2人で行き、楽しんだ。車いすマラソンで同時に表彰台に乗ったこともあった。村岡は「思い切り車いすをこいだ。みんなと対等にできたことが本当にうれしかった」と振り返る。
小学3年でスキーを始め、埼玉の自宅から平日のナイターは群馬に、週末は長野のスキー場に2人で通った。「どうしたら速く滑れるかな」。試行錯誤を繰り返した。
10日のメダルセレモニーで、村岡は秀樹さんの首に銀メダルをかけた。互いの表情は涙で見えなかった。自宅には村岡がワールドカップで勝ち取ったメダルがずらりと並ぶ。それでも、これまで娘が父にメダルを渡したことはなかった。秀樹さんは言う。「パラリンピックのメダルは僕たち2人が目指してきた夢でした」(西村奈緒美)