電話で知らせを受ける原口アヤ子さん(弁護団提供)
殺人事件ではなく事故の可能性――。大崎事件の再審請求をめぐる福岡高裁宮崎支部の再審開始決定を弁護団は高く評価した。請求人の原口アヤ子さんは90歳になる。「早く無罪だという言葉を聞かせてあげて」。支援者らには喜びと焦りが交錯した。
「大崎事件」再審認める 3度目の請求で 高裁支部
弁護団は12日昼過ぎ、宮崎市内で記者会見した。
事務局長の鴨志田祐美弁護士は「殺人事件ではなく、その前に事故で亡くなっていた可能性を認めている」と評価。「有罪は立たないと確信を持って書かれた決定だと思う」
無罪が確定した「足利事件」の再審請求で主任弁護人を務めた佐藤博史弁護士は、地裁決定から約8カ月で高裁決定が出たことに触れた。「アヤ子さんの年齢もあるなか画期的な短さで、裁判所の模範になる。検察の即時抗告自体がおかしかったと指摘しているのでは」と述べた。
支援者によると、原口さんは12日、入院先の病院で「勝ったよ」と告げられると、少しうなずき、「あ・り・が・と・う」と声を絞り出したという。
事件から38年半。一貫して否認してきた。刑務所で仮出所を打診された際は「自分の罪を認めることになる」と拒否した。「あたいはやっちょらん」。そんな原口さんの言葉に、支援の輪は広がっていった。支援者の一人は「寝言でも『やっちょらん』と言っていた」と明かす。
2014年ごろから体の衰えが目立ち始め、高齢者施設に入所。軽い脳梗塞(こうそく)を2回患い、言葉を発する力も一気に弱まった。昨年、病院へ移り、筋力が衰えないよう、毎日リハビリに励んでいるという。
4日に鴨志田弁護士や支援者が「やり直し裁判では、人定質問で名前を言わないとだからね」と伝えると、原口さんは「は・ら・ぐ・ち・あ・や・こ」と声を出したという。鴨志田弁護士は「裁判の話になると、ぱっと目を光らせた。意識ははっきりしている」。