福岡地裁=福岡市中央区
きょうも傍聴席にいます。
苦しそうに声を漏らす3歳の次男。女は一瞬、首を絞めたベルトを緩めた。懸命に息を吸う小さな息子。だが、女は再び手に力を込める。数時間後には、11歳の長男も手にかけた。「子どもが私にとって一番大事」。法廷でそう語った女が、なぜわが子2人を殺害したのか。
特集:きょうも傍聴席にいます。
今年1月15日、福岡地裁1号法廷。殺人罪に問われた山口県光市の被告の女(38)の初公判があった。白いセーターに黒っぽいパンツ姿。裁判長から起訴内容に間違いがないかを問われると、「ありません」と平板な声で答えた。
起訴状によると、被告は2016年6月7日夜から8日未明までの間、熊本県山鹿市に駐車中の乗用車内で、チャイルドシートに座っていた次男(当時3)の首をベルトで絞め、窒息死させた。その後、熊本市北区に移動し、車内で寝入っていた長男(同11)の首をロープで絞めて殺害したとされる。
公判などから事件をたどる。
被告は04年に大学時代の同級生だった夫と結婚。05年に長男、13年には次男が生まれた。次男には食べ物をかんだり、のみ込んだりがしづらい摂食障害の症状がみられた。
今年1月17日にあった被告人質問。被告が次男の世話などで忙殺されていた様子が明らかになった。
弁護士「摂食障害とはどんなものでしたか」
被告「崩れる寸前まで煮たかぼちゃでも、(次男は)歯でかんだり舌でつぶしたりできませんでした。飲み物はスプーンでとらせていました」
弁護士「十分な水分をとるのにどれくらいの時間がかかりましたか」
被告「40分から1時間です」
次男の摂食障害がわかったのは1歳半になった頃。医師と相談して1日2回、経鼻チューブで栄養剤をとらせ、ぐずって暴れないようバスタオルにくるんで寝かせた。食べる度、胃に入っていることを確かめるため聴診器をあてた。
2歳になってからは全ての食材をミキサーでつぶし、一口ずつ食べさせた。次男の就寝後には毎晩、成長ホルモンを注射した。「食べることが好きになって、大きくなってほしいとずっと思っていました」
次男にかかりきりだった一方で、長男には野球チームの練習の送迎や弁当作りを欠かさなかった。被告は法廷で長男の思い出として、バレンタインデーにチョコを三つもらってきたことを挙げた。「女の子に手紙ももらって、私もとてもうれしかった」
多忙な家事を被告はほとんど1…