中央学院を破り、スタンドに駆け出す明徳義塾の選手たち=兵庫県西宮市の阪神甲子園球場、遠藤真梨撮影
(25日、選抜高校野球 明徳義塾7―5中央学院)
2年分の苦い記憶、吹き飛んだサヨナラHR 明徳・谷合
馬淵監督も跳んで喜ぶ劇的勝利「この試合忘れられない」
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あきらめなかった4番の一振り――。第90回記念選抜高校野球大会3日目の第1試合は明徳義塾(高知)が中央学院(千葉)を劇的な逆転サヨナラ本塁打で破った。昨秋の明治神宮大会と関東大会の王者が相まみえた屈指の好カード。4万人の大観衆が筋書きのないドラマに酔いしれた。
試合は終盤に大きく動いた。中央学院は2点を追う八回1死満塁、打席には高鹿(こうろく)隼人選手(2年)が入った。4番に抜擢(ばってき)されたが、ここまで3打席3三振。「とにかく1本、みんなのために」と力まないように心がけて初球をとらえると、打球は三遊間を破った。「野球って楽しいな」。打った瞬間、そう思ったという同点打に。西村陸選手(3年)も2点適時打を放って勝ち越した。
中央学院は春、夏通じて初の甲子園だ。マウンドの大谷拓海投手(同)は「一球一球で歓声があがるすごい場所だった」。八回まで4失点でしのぎ、九回裏二死走者なし。初勝利まであと1死というところまでこぎつけた。
だが、明徳義塾の闘志は衰えていなかった。田中闘(とうわ)選手(3年)は「初戦なんかで負けてられへん」とがむしゃらにバットを振って中前安打でつなぐ。続く渡部颯太選手(同)は死球を受けて「よっしゃ!」。一塁に向かいながら次打者の谷合悠斗選手(同)に「笑顔!」と声をかけた。
4番に座る谷合選手はここまで4打席無安打だった。八回の併殺打で頭から一塁に滑り込んだときに舞った土があご付近を黒くしていた。「最後まであきらめない。ひたすらボールに食らいつくだけ」という執念が残っていた。大谷投手の135球目を振り抜くと、白球がバックスクリーンで弾んだ。
一塁側ベンチから一斉に飛び出す選手たち。本塁に歓喜の輪が広がった。渡部選手は谷合選手に一番に抱きついた。「谷合はスイーツ好きなんで、ごほうびにケーキを買ってあげようと思う。ホールケーキでおいしいやつ」(福井万穂、鈴木孝英、辻健治)