東邦―花巻東 九回表、最後の一球を投げ込む花巻東の投手田中=遠藤真梨撮影
(26日、選抜高校野球 花巻東5―3東邦)
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大会屈指の東邦打線をどうやって抑えるか。それが、花巻東のエース田中に課せられた使命だった。
「どうやって倒そうかと、悩みました」
直球は最速130キロほどで、この日は120キロ前後がほとんど。だから、球速で勝負する気はない。武器である「ずらす」能力を最大限に発揮した。
「ずらす」のは、打者とのタイミングであり、バットの芯だ。直球と同じ腕の振りから、途中までは直球と同じ軌道で、そこから沈むチェンジアップ。映像で分析した結果、「直球に強い東邦打線」には、これが効果的だと判断した。
二回。秋の公式戦で出場選手中最多の6本塁打を放った梅田を108キロで、ずらす。続く山本も112キロで腰砕けに。連続の空振り三振だ。
細心の注意を払い、低め、低めへ。東邦打線にフルスイングを許さない。強引に振っても、バットの芯には当たらない。被安打は5。3三振の山本に「三つはこれまでしたことがない」と嘆かせた。
強豪校なら140キロを投げる投手が珍しくない時代。毎年10人前後の投手が入部してくる花巻東にあって、田中は2年から主力として投げる。
この日は試合中にも何度も捕手の佐藤と話し合い、攻め方を確認した。打者の特徴を見て「ずらす」能力に加え、走者が出ればしつこく牽制(けんせい)球を入れられる冷静さ、そして、九回の反撃もはねのける精神力。
菊池雄星(西武)、大谷翔平(エンゼルス)を生んだ花巻東のエースが見せた「奥深さ」。投手の魅力は、球速だけじゃない。(山口史朗)
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○阿部(花) 七回に貴重な適時打。「田中を助けたかった。前の打席で崩されたスライダーが初球に来たので、何とか食らいついた」
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花巻東の初戦突破は菊池雄星(現西武)を擁し、準優勝した81回大会以来。大谷翔平(現エンゼルス)がいた前回出場の84回大会は、藤浪晋太郎(現阪神)らを擁する大阪桐蔭に初戦で敗れた。