中央学院―明徳義塾 九回裏明徳義塾2死一、二塁、谷合は中越えに逆転サヨナラ本塁打を放つ。捕手池田=奥田泰也撮影
(25日、選抜高校野球 明徳義塾7―5中央学院)
馬淵監督も跳んで喜ぶ劇的勝利「この試合忘れられない」
サヨナラHR被弾に「1球で終わるんだ」中央学院・大谷
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自信を失いかけた主砲がいた。
九回、明徳義塾は2死から2番田中が安打を放つ。続く渡部は死球で一、二塁。必死でつなぐ仲間を前に、4番谷合は「打てない不安と、絶対打つという気持ち。半々でした」。
2年分の苦い記憶が、谷合を弱気にさせていた。
1年生の夏は作新学院(栃木)との準決勝で失点に絡む失策。2年生の4番打者で迎えた昨夏の2回戦は九回の反撃機で三振し、最後の打者になった。「甲子園にいい思い出はない」と漏らしたこともある。
振り返れば、谷合は1年生から明徳のキーマンだった。作新戦の前、馬淵監督は「(守備の苦手な)谷合の所に打球が飛ばなかったら勝つ」と言った。そして、飛んで、負けた。
昨夏も昨秋も、この日の試合前も監督は度々言った。「谷合が打てば、点が取れる」と。スイングも打球の質も「格が違う」と認める主砲だからだ。
だが、4打席目まで無安打で1併殺。沈黙している間に、エース市川がつかまって逆転された。
「自分が打てば楽な展開になったのに……」。打席に入ると、必死さが不安を打ち消した。「くらいつく」。3球目。歯を食いしばって真ん中高めの139キロを振り切った。
手応えは分からない。でも、中堅から右方向への長打を目指して振り込んだ冬場の成果はしっかりと体に染みついている。「やることをやっていれば、結果は出る」と信じて。
練習通り。負の思い出を吹き飛ばす人生初の逆転サヨナラ本塁打が、バックスクリーンで弾んだ。(山口史朗)
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○馬淵監督(明) 春夏通算甲子園50勝をサヨナラ勝ちで飾る。「野球は怖い。落とした勝ちもあるし、拾った勝ちもある。あっという間の50勝」