昨秋の東北大会で力投する聖光学院の衛藤
(27日、選抜高校野球 東海大相模12―3聖光学院)
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聖光学院のエース、衛藤慎也は、得点を重ねる東海大相模の攻撃をベンチの端から見つめていた。「甘いコースは全部打たれるんだな」。そして、こうも思った。
「投げたい。情けない」
この日、登板する機会はなかった。開会式直後の1回戦の東筑戦で2番手としてマウンドに立ち、3回3分の1を投げたが、その後、昨年に手術をした右ひじの状態が悪くなった。斎藤監督は「無理をさせられない」と、起用しないことを決めた。
だが、衛藤の受け止め方は違った。「自分は、まだ通用しないと判断されたのだと思います」
先発マウンドに上がったのは、同学年で競い合う左腕の高坂右京。2番手で右腕の上石智也がマウンドに向かった。「3人に力の差はない」と衛藤は認識している。
東海大相模の打線はすごかった。高坂はアウトを二つしか取れず、6失点。上石も勢いを止められなかった。
投げられない悔しさはあった。でも、試合では押し殺した。序盤はブルペンで準備もしたが、出番がないことを悟ると、出場選手のサポートに徹した。攻守交代では真っ先にベンチを飛び出して味方を励まし、捕手のレガースをつけるのも手伝った。背番号1とは、「チーム全員から一番信頼されている投手がつけるもの」と思っている。だから、プレー以外の役割でも全力を注いだ。
昨秋、東北大会を初めて制する原動力となった右腕。「チーム史上最強」とも言われる打線とともに、衛藤の存在があったから、今大会の前評判も高かった。だが、エースを欠いたチームは、明らかにその勢いを失っていた。
「やっぱり悔しいですね。投げられないのは」と衛藤。この気持ちを、夏の復活への糧にしていく。(小俣勇貴)