カヌースプリントの海外派遣選手最終選考会に出場する小松正治(右)。左はアンチドーピングの講習会で講師を務めた元競泳日本代表の松田丈志さん=香川県坂出市の府中湖カヌー競技場
カヌーの有力選手がライバル選手の飲み物に禁止薬物を不正混入した事件を受け、日本カヌー連盟は27日、香川県坂出市で開幕したスプリントの海外派遣選手最終選考会で本格的な再発防止策を初めて採った。
選手の飲み物は、これまで他人が触れられる状態で放置されることが常態化していたが、今大会ではコースの入り口付近にプレハブの管理所が設けられた。そこには警備員が配置され、監視カメラが設置された。希望者が管理所の係員に飲み物を渡すと、預けた時間、選手名、ゼッケン番号を書いたシールがボトルに貼られ、クーラーボックスに保管された。
薬物混入の被害を受けた小松正治選手(愛媛県協会)は、この大会が事件後初の公式戦。開会式後に取材に応じ「自分のボトル管理にも責任があった。管理所は使っていきたいし、うっかりドーピングにも気をつけたい」と話した。2月上旬から3月にかけてトレーニングをしていたハワイでも、抜き打ち検査があったという。
2010年の広州アジア大会のカヤックペアで金メダルを獲得した水本圭治選手(チョープロ)は、この日の練習前にボトルを預けた。「今回の事件も一つ間違えれば自分が被害者になっていた。自分の身は自分で守らなければならないと思う」。事件前は、飲み物を放置していたという。
開会式後には、日本アンチ・ドーピング機構でアスリート委員を務める競泳元日本代表、松田丈志さんの講習会が開かれた。会場にはスポーツファーマシスト(ドーピングなどに詳しい薬剤師)の医薬品相談窓口が設けられ、事案を受けて作成された啓発冊子も置かれた。
同様の再発防止策は、スラロームの日本選手権を兼ねたNHK杯(4月、富山)でも実施される。この大会には16年リオデジャネイロ五輪で銅メダルを獲得した羽根田卓也選手(ミキハウス)が出場予定だ。(前田大輔)