腐食が進んだ「風の電話」と佐々木格さん(岩手県大槌町吉里々々) 東日本大震災で被災した岩手県大槌町で、会えなくなった人に思いを伝える「風の電話」のボックスが、老朽化して壊れる寸前になっている。被災した人らが多く訪れて受話器を握り、心の内を語ってきた。この場所を守りたいと、設置した同町吉里々々(きりきり)の庭師佐々木格さん(73)が使わなくなった電話ボックスを探している。 「風の電話」の6年を本に 制作者の佐々木格さん 風の電話は、佐々木さんが2009年に病死した親類の遺族のために発案した。「電話」を通じ、親類が亡くなった人に心の内を話して欲しいという意図だった。閉店したパチンコ店にあった木製の電話ボックスをもらって自宅の庭に運び、線のつながっていない黒電話を置いた。 屋根を付けたり、周囲の庭造りをしたりして完成間近だった11年3月11日、震災が起きた。4月に完成すると、報道や口コミで広まり、多くの遺族らが訪ねるようになった。 「あなたは誰と話しますか 風の電話は心でします」。電話ボックスの中にはそんな言葉が添えられている。震災やそれ以外の事情でも、家族や友人を亡くしたり、会えなくなったりした人が受話器を取って「会いたいよ」「元気でやっているからね」などと思いを話し、心を癒やしてきた。その人数は7年間で2万6千人を超す。 しかし、電話ボックスはもともと室内用に作られたもので、佐々木さんがペンキを塗るなど補強したが、風雨や潮風で木材や金具の腐食が進んだ。15年1月には強風で電話ボックスごと吹き飛ばされた。特に土台に接する木材が腐っており、「年内もつかどうか。腐食しにくいアルミ製に取り換えたい」と話す。 「どこかに古い電話ボックスが残っていたら譲ってもらえませんか」。連絡は佐々木さん宅(0193・44・2544)。(東野真和) |
故人と話す「風の電話」倒壊危機 被災地で心癒やし7年
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