東京都葛飾区で2014年4月に区立中学校3年の男子生徒(当時14)が自殺した問題で、区が設けた第三者による調査委員会(委員長=平尾潔弁護士)は28日、「社会通念上、いじめにはあたらず、衝動的に自死に及ぶ結果となった」とする調査報告書を青木克徳区長に答申した。区側はいじめはあったと認めていたが、調査委はそれを否定する形で結論づけた。
いじめをなくすために 解決へ向けてできることは
調査報告書によると、男子生徒は14年4月9日、部活動でチームを決める話し合いで他の生徒と意見が分かれて黙り込んで動かなくなり、他の生徒たちが霧吹きで水をかけたり、ジャージーのズボンを下ろそうとしたりした。生徒は無言で学校から立ち去り、夕方に区内で自殺した。
他の生徒による行為について、報告書は「常日頃からお互いにふざけあってやっていた。日常許容されていた遊びの手法」と認定。平尾委員長は「自死に至った原因として可能性が高いのはチーム決めで、他の生徒の行為には因果関係が認められない」と述べた。
調査委は今回の調査で、いじめの定義を「いじめ防止対策推進法」で定められている「対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの」をそのまま当てはめず、「社会通念上いじめと評価できる行為が認められる場合」とした。調査委は同法に基づいて設置されたが、平尾委員長は「(法律上の)定義は広く、社会通念とのずれが生じてきているため苦慮した」と理由を説明した。
区側は当初、事故死とみていたが、その後に自殺だったと判断。因果関係を否定しつつ、いじめはあったと認めた。今回の調査結果について、遺族側は「到底納得できない」とコメントを出し、報告書の再考を求めた。(辻健治、有吉由香)