智弁学園―創成館 十回裏創成館2死、松山は中越えにサヨナラ本塁打を放つ。投手川釣⑪=遠藤真梨撮影
第90回記念選抜高校野球大会の3回戦が30日あり、創成館は智弁学園(奈良)を今大会初の延長戦の末、2―1のサヨナラで破った。春夏通じて4度目の甲子園で初めて2勝を挙げ、8強入り。選抜大会での県勢の8強入りは、2016年の海星以来。次戦は大会第10日の第2試合(4月1日午前11時開始予定)で、智弁和歌山と対戦する。
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けが乗り越え「秘密兵器」好投 酒井駿輔投手(3年)
「酒井の好投に尽きる」。創成館の劇的なサヨナラ勝ちにつなげたのは、稙田龍生監督が「秘密兵器」と語る酒井駿輔投手(3年)の好投だった。四回から登板し、毎回の6奪三振。相手打線を封じた。
「第5の男」とも呼ばれる。酒井君がメンバー入りしたのは3月中旬。登録されていた野手の代わりに、5人目の投手に滑り込んだ。監督は「秋の4人でいこうと思ったが、調子が良くないので」と悩んだ末の決断だったと明かす。
酒井君は昨年9月、体育の授業中に左ひざを負傷。登録メンバーから外れた。「どこに気持ちをぶつければいいかわからなかった」。酒井君がいない中、チームは明治神宮大会で準優勝。「次は自分があっちに行ってやる」。スタンドから静かに闘志を燃やした。
復活できたのは、監督の言葉が大きかったという。「あきらめず、春に向けて全力で頑張れ」。冬は下半身を強化し、体重は8キロ増。もともと自信のあった制球力に、球速や変化球の切れも加わった。めげなかった酒井君に、監督は「よう頑張ったな」と声をかけたという。
チェンジアップやスプリットなど、7種類の変化球を操る技巧派。「データがない分、相手は打ちづらいはず」。この日はそれに加え、昨秋の欠場をも武器にするしたたかさがあった。
バックももり立てた。八回、途中出場の杉原健介君(3年)が三直をダイビングキャッチ。負傷している右手を地面に突きながらの好捕に、酒井君は「自分の失投だったので健介が捕ってくれてうれしかった」とはにかんだ。
応援席では父の利泰さん(47)が見守った。「後輩たちに夢を与えてくれたら」との期待に最高の投球で応えた。酒井君は「ケガで両親に心配をかけていたので、活躍する姿を見せたかった」。
試合後、「機会があれば、先発でもいきたい」。8強の立役者は疲れを見せず、さわやかに答えた。(森本類)