創成館の中堅手峯君=1日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場、遠藤真梨撮影
(1日、選抜高校野球 智弁和歌山11―10創成館)
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選抜大会準々決勝の1日、創成館(長崎)は乱打戦の末、智弁和歌山に惜しくも逆転で敗れた。初のベスト8まで進んだ今年のチームには、兄の背中を追って創成館に入った2人の選手がいた。
同点に追いつかれた直後の十回表1死三塁。打席に入った鳥飼悠斗君(3年)は、引きつけた変化球を思い切り振り抜く。打球は浅い外野フライ。だが、三塁走者は本塁を陥れ、再び勝ち越した。「これで勝ったと思った」。だがその裏、2死から逆転サヨナラ打を浴び、敗れた。
2015年の夏、鳥飼君の兄・立樹さんは、創成館のリードオフマンとして甲子園に出場、初勝利に貢献した。同じチームにいたのが、現在のチームの主将、峯圭汰君(3年)の兄・周汰さんだ。3番中堅手として、立樹さんとともに活躍した。
鳥飼君たちは、兄が敗れた2戦目の健大高崎(群馬)戦を甲子園で観戦。球場の雰囲気が忘れられなかった。峯君は「球場に入った瞬間、景色が違った。鳥肌が立った」。
鳥飼君も、峯君も、兄の影響で小学校低学年の時に野球を始めた。創成館に進んだのも、兄が目標だったからだ。選抜出場が決まり、2人とも「兄を超えるチャンス」と意気込んだ。
初戦の下関国際(山口)戦で、峯君は左中間を破る二塁打を放つなど3安打。周汰さんから「めっちゃ打ったな」とLINEで祝福のメッセージを受けた。
鳥飼君は無安打だったが、この日の智弁和歌山戦は一回に適時打。4点を奪われた五回には、左前に抜けそうな打球に飛びつき、追加点を食い止めた。アルプススタンドで観戦した立樹さんは「チームを活気づけるプレーができた。誇らしい」と話した。
初めての甲子園は終わった。チーム成績では、兄を上回ったかもしれない。だが2人にはまだ、兄を超えたという実感はない。「夏にもう一回勝負したい」(鳥飼君)。「兄が目標であることは変わらない」(峯君)。夏こそ必ず、兄の背中を追い越すつもりだ。(森本類)