
(1日、選抜高校野球 智弁和歌山11―10創成館)
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つなぐ意識は頭にない。「自分で決めてやる」。1点を追う十回2死一、二塁。智弁和歌山にとっては単打で同点を狙える場面。黒川は長打を狙っていた。高嶋監督の指示も、「手打ちになるな。強く振れ」と背中を押す。
低めのチェンジアップを、拾うのではなく強く振り抜く。白球は左翼手の頭上を越え、2者がかえり、逆転サヨナラ。アルプス席の赤い「C」の人文字が揺れに揺れた。
16安打の創成館に対し、智弁は14安打。九回までリードされ続けた。最大で5点差もあった。「何点とられても絶対諦めないのが、智弁和歌山」と黒川。打ち勝てたのは、長打へのこだわりがあったからだ。
智弁は自主練習で、打ちっ放しのフリー打撃をする。時間は無制限。選手は「7カ所」を狙って打つ。左翼線、左越え、左中間、中越え、右中間、右越え、右翼線。全て長打コースだ。「チャンスのときこそ、7カ所を狙う」と主将の文元。この意識が、破壊力のある打線を育んだ。
序盤には黒川、林がソロ本塁打を豪快に逆方向の左越えへ。2点差の九回2死満塁では「打撃が苦手。怖い」という投手平田が、甘く浮いた直球を強振して同点打にした。
こんな点の取り合いが、高嶋監督には2006年夏の帝京戦と重なったという。4点リードの九回表に8点を取られ、裏に5点を取り返して、13―12でサヨナラ勝ちしたゲームだ。
「口では諦めるなと言うとったが、ちょっと無理かなと」と高嶋監督。どっこい、準優勝した00年以来の4強入り。あの頃の、怖い雰囲気が出てきた。(小俣勇貴)