パブリックビューイングで花巻東に声援を送る佐々木琉さん(中央)=2018年4月1日、岩手県花巻市、渡辺朔撮影
1日の第90回記念選抜高校野球大会準々決勝で花巻東(岩手)が昨春優勝の大阪桐蔭に挑んだ。点差が開いても決して諦めないプレーに、スタンドだけでなく地元からも惜しみない声援が送られた。
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花巻東の地元、岩手県花巻市では市内のホールでのパブリックビューイングに同高の生徒や住民ら約200人が集まった。
「フレー、フレー」と大きな声をあげたのは応援団長の佐々木琉(りゅう)さん(3年)。同県釜石市出身で東日本大震災の津波で家が流され、花巻へ内陸避難した。友人たちと離れ、「なんで僕だけひとりぼっち」と泣きそうになった。
心の支えの一つが父の英明さん(43)ら家族とテレビ観戦してきた花巻東の試合。どんな試合でも諦めることなく笑顔ではつらつとした選手たち。「高校野球って元気をもらえるんだ」。気持ちが晴れ、今では新しい友人もできた。
今大会は別の部活の関係で甲子園入りできなかったが「もらった興奮と勇気への感謝を込めて精いっぱい声を出した。夏は一緒に行きたい」と笑顔を見せた。
甲子園のアルプス席にいた花巻東OBの大学生菊池勇志さん(19)は同県大槌町出身で、震災当時は中学生。自宅が全壊し、学校も流された。他校の校庭で練習し、全国から寄せられたバットやグラブを使った。自身は甲子園の土は踏めなかったが、一緒に練習した後輩たちが甲子園でプレーするのがうれしい。
今は東京の大学に通う。花巻東の活躍が「地元の人の原動力になったり、復興が進まない被災地に目が向いたりするきっかけになれば」と願う。
結果は19点差。捕手の佐藤千暁(ちあき)君(3年)はこの日、大会連覇を狙う強豪の強さを知った。同県大船渡市出身。「家は高台で無事だったけど、町が津波で流される様子を目の当たりにし、ショックだった」。
地元の人たちはいつも励ましの声をかけてくれる。「勝って喜んでもらいたかった。この敗戦を糧にして一からチームを強くしたい」と前を向いた。
6回から右翼手として甲子園初出場した瀬戸雄貴(たかき)君(3年)は釜石市出身。震災当時、鵜住居(うのすまい)小4年生だった。全校生徒で高台に避難して無事だった。いわゆる「釜石の奇跡」とも呼ばれる、その中にいた。「夏は日本一をとるために、本気になってやる。今すぐ地元に帰って練習を始めたい気分です」と力強く話した。(渡辺朔、国方萌乃、恵藤公浩)