創成館―智弁和歌山 十回裏智弁和歌山2死一、二塁、黒川は左越えにサヨナラ二塁打を放つ=遠藤真梨撮影
(1日、選抜高校野球 智弁和歌山11―10創成館)
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「神様、打たせてください」。1点を追う延長十回2死一、二塁。黒川史陽君(2年)は心の中で祈った。「最後だとは思わなかった。やることを全部やってきたから」。4球目のチェンジアップを振り抜くと、白球は風に乗り左翼手の頭を越えた。人生初というサヨナラ打。黒川君は試合後のお立ち台で「父に近づいた。絶対に超えたい」と力強く語った。
黒川君の父、洋行さんは上宮(大阪)の主将として1993年の選抜を制した。「父は心強い存在」と黒川君。野球を始めた小学生の頃から、打撃フォームを見てもらったり、ノックを受けたりしてきた。
自宅のリビングに飾られている父の選抜の入場行進の写真やメダルなどに刺激を受け、甲子園を目指し智弁和歌山に進学。高校入学後も下宿先からほぼ毎日、父の仕事終わりの夜11時ごろに電話し、チーム状態や練習のことを話す。父に「夏前の追い込み練習がきつい」と漏らすと、「きついくらいがちょうどいい。体重だけは落とすな」とアドバイスをもらった。
冬場は体幹トレーニングで下半身などを鍛え、気が済むまで3時間ほどスイングを続け、自分を徹底的に追い込んできた。「野球となるといろいろ研究するし、普段から陰で努力している」と文元洸成主将(3年)も一目置く。
「父には負けたくない。いつか超える存在」と黒川君は言い切る。父には「(選抜優勝は)超せないやろ」と発破をかけられたが、それが逆に原動力だ。「優勝しか見えていない。優勝メダルを父のメダルの横に置く。絶対に次の試合も打つ」。そう誓った。(片田貴也)