ベッド型の車椅子に横になり対局に臨む古込和宏さん(奥)と代わりに碁石を置く北野昭さん(右)ら=1日午前10時48分、金沢市片町1丁目、田中ゑれ奈撮影
全身の筋肉が衰える難病の筋ジストロフィーを患う金沢市の古込(ふるこみ)和宏さん(45)が1日、第13回朝日アマ囲碁名人戦石川県大会(朝日新聞金沢総局、日本棋院主催)に念願の出場を果たした。
ベッド型の車椅子に横たわる古込さんが、棒を口にくわえてセンサーを操ると、脇に置かれたパソコン画面上の碁盤に石が現れる。実際の碁盤をはさんで対局相手と向き合う介助者が、代わりに古込さんの石を置き、相手の石を画面に反映させていく。
5歳で筋ジストロフィーと診断された。院内学校の小学部5年の時に教わった囲碁にのめり込み、中学、高校時代には4年連続で全国大会に進んだ。「暇を持てあますだけの何もない人生に目標ができた。気持ちも生活も変わった」
だが病状が進み、次第に外出も難しくなった。インターネットで大会の結果や情報を眺めながら対局サイトで碁石を動かす日々だった。昨年10月、長時間介護が必要な人への支援制度「重度訪問介護サービス」を使った24時間介護が金沢市で初めて認められて退院。大会出場を決意した。
この日は、古込さんに囲碁を教えた特別支援学校教員で恩師の北野昭さん(58)が代わりに碁石を動かした。予選2局とも中押し負けしたが、古込さんは「久々に出た割には予想外の出来。一騎打ちの緊張感はネットや練習対局と全然違った」と笑みをこぼした。「重度訪問介護を使えば自由に外へ出られる。可能性が広がった」と実感したといい、今後も大会への挑戦を続けるという。(田中ゑれ奈)