今春から日本生命の所属選手となり、記念ユニホームを贈呈された桐生祥秀(左)
陸上の今季トラックシーズンがいよいよ本格的に幕を開ける。男子短距離では昨季、当時東洋大4年の桐生祥秀(日本生命)が100メートルで日本選手初の9秒台となる9秒98の日本記録をマークし、新たなステージに突入した。さらなる記録更新が期待される今季、桐生に負けじと、ライバルたちも順調な仕上がりをみせている。
山県「いい練習できた」
昨年9月に自己ベストを10秒00まで縮めた山県亮太(セイコー)は3月25日、約1カ月のオーストラリア合宿を終えて帰国した。昨季好感触を得たレース中盤からの加速にさらに磨きをかけてきたといい、「暖かいところでスピードを上げて、いい練習ができた」と充実した表情だった。
今季初戦として出場した先月22日のブリスベンでの競技会では、10秒15(追い風1・7メートル)。今季の目標は当然のように日本記録更新を掲げ、「現実的な目標として9秒8台を目指したい」と話す。
17年に飛躍を遂げた多田修平(関西学院大)は、3月29日に奈良市記録会で今季初戦を走った。記録は10秒29(向かい風0・8メートル)。「状態が6、7割程度としてはまずまず」という。今年のオフは2月から3月にかけて米国、オーストラリアで合宿した。課題とするレース終盤の減速を抑えるために、スタートでの消耗を極力減らすことにも取り組んだという。
昨季は世界選手権(ロンドン)に日本代表として出場し、100メートルで準決勝進出、リレーでは銅メダル。大舞台を経験して自信もついたようで、「日本新記録は最低条件。9秒8台を目指していきたい」と、強気な発言が目立ってきた。
ケンブリッジは米武者修行
同じく世界選手権代表だったケンブリッジ飛鳥(ナイキ)は今月2日、米国での「武者修行」を終えて、帰国した。3月31日には、米テキサス州であったテキサス・リレーに出場し、10秒22(追い風4・1メートル)の参考記録で初戦を終えた。
昨秋から、リオデジャネイロ五輪男子100メートル銅メダリストのデグラッセ(カナダ)ら有力選手が所属し、米アリゾナ州に拠点を置くチーム「ALTIS」の練習に参加する。
「常に世界のトップを感じられた。毎日、練習に行くのが楽しみだった」とケンブリッジ。山県も出場する今月の織田記念国際(28~29日、広島)が国内初レースになる見込み。山県、多田、ケンブリッジと桐生が今季初めて顔を合わせるレースは、5月20日のセイコーゴールデングランプリ大阪(ヤンマースタジアム長居)になりそうだ。
山県、多田、ケンブリッジがそろって口にする今季のもう一つの目標が、今夏にジャカルタであるアジア大会だ。代表は男子100メートルで3枠あった世界選手権よりも狭き門の2枠だ。
アジア大会には桐生も意欲を見せているほか、昨季の日本選手権を制し、米国での今季100メートル初戦で10秒46(追い風1・4メートル)だったサニブラウン・ハキーム(米フロリダ大)も、代表争いに加わるか。男子100メートルは今季も熱い戦いが繰り広げられそうだ。(遠田寛生)