大会前の会見に臨む(左から)男子100キロ超級の小川雄勢、同90キロ級の向翔一郎、同60キロ級の永山竜樹、女子52キロ級の志々目愛、阿部詩、同78キロ超級の素根輝=池田良撮影
柔道の世界選手権(9月、バクー)の代表選考会を兼ねた全日本選抜体重別選手権が7日に福岡国際センターで開幕する。注目は女子52キロ級の阿部詩(うた)(17)=兵庫・夙川学院高=だ。男子66キロ級で世界王者の一二三(20)=日体大=を兄に持つ詩が、この大会で優勝すれば、初の世界選手権代表が確実とみられる。すでに世界選手権出場を決めている兄とのきょうだい出場もかなう。
兄、妹で世界選手権の個人戦に同時出場すれば、日本柔道界初となる。6日の記者会見で詩は、「(世界選手権に兄と)一緒に出て、世界一になりたい」と意欲を語った。
兄の一二三は「成長させてくれる存在」
詩にとって三つ年上の兄、一二三は「自分を成長させてくれる一番身近な存在」という。一二三は昨年の世界選手権(ブダペスト)を制覇し、その後のグランドスラム(GS)東京も制したことで、早々と世界選手権出場を決めた。そのため今大会は出場せず、客席から妹に声援を送る。
ただし、女子の全7階級のなかでも、52キロ級は最激戦区だ。日本代表の増地克之・女子監督が「他の6階級と比較して、世界で戦える選手が集っている」と言うほど、日本の選手層が厚い。
昨年の世界選手権を制した志々目愛(24)=了徳寺学園職=、2位の角田夏実(25)=同=という世界のワン・ツーが今大会も出場する。詩自身も昨年12月のGS東京、今年2月のGSパリと国際大会で2連勝を果たし、力をつけているが、ここで2人の強敵を倒さなければ、世界選手権切符は遠ざかる。
「海外の大会で勝つより、この大会で勝つ方が難しい」と自覚しているが、気持ちの強さも兄譲りだ。「この大会で勝って代表になるために、最高の準備をしてきた。絶対に自分が勝つという気持ちで臨みたい」。ひるむそぶりは毛頭ない。(波戸健一)
ベイカー復活なるか
全日本選抜体重別選手権には、2016年リオデジャネイロ五輪の金メダリスト2人が、久しぶりに国内大会に出場する。
男子90キロ級のベイカー茉秋(23)=日本中央競馬会=は、昨年のこの大会で右肩を脱臼。リオデジャネイロ五輪の前から亜脱臼を繰り返していた箇所が悲鳴を上げ、大会後に手術に踏み切った。
鋼のような筋肉は落ち、一時は体重が10キロ近くも減ったが、中学生相手の稽古から徐々に負荷を上げたという。復帰戦だった2月のグランドスラム(GS)デュッセルドルフで準優勝を果たし、今大会で完全復活を目指す。
もう一人は、男子73キロ級の大野将平(26)=旭化成=だ。昨季は天理大大学院での学業を優先し、無差別の全日本選手権に出ただけで実戦から離れていた。ベイカーと同じく2月のGSデュッセルドルフで復帰した。
同じ階級では、橋本壮市(26)=パーク24=が台頭し、大野が出場しなかった昨年の世界選手権を制した。両者が順調に勝ち上がれば、決勝はオリンピック王者と世界王者の対決になる。