ニューヘブリデス諸島(現バヌアツ)の「祖先像」=国立民族学博物館蔵
1970年の大阪万博で芸術家の故岡本太郎さんが手がけた「太陽の塔」(大阪府吹田市)の内部の一般公開に合わせた特別展「太陽の塔からみんぱくへ―70年万博収集資料」が、国立民族学博物館(吹田市)で開催中だ。万博で展示するため、世界各地から集められた民族資料約650点が紹介されている。
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若手研究者が世界各地へ
資料は68~69年、平均年齢30歳の若手研究者ら約20人が「日本万国博覧会世界民族資料調査収集団」を結成し、47カ国・地域を手分けして回り、仮面や彫像、生活品など約2500点を集めた。その一部は70年の万博当時、太陽の塔の地下で展示された。
収集の発案者は岡本さんだった。収集団の一員だった文化人類学者の石毛直道さん(元民博館長)によると、岡本さんはテーマ館のチーフプロデューサーとして塔の地下に「人類の根源」を示す空間をつくる構想を立てた。「『力あるものを』という岡本さんの意向で、儀式や祭礼で使う仮面や神像を中心に集めた」と石毛さん。収集した資料はガラスケースに入れずに、そのままで展示された。
資料は万博の閉幕後、民博に引き継がれ、今回の特別展ではこのうちの約650点を紹介する。世界各地の衣服や装飾品、生活用品、楽器、農機具などを地域別に見ることができ、収集の中核だった仮面と彫像はそれぞれずらりと並ぶコーナーを設けた。
両手広げた祖先像に…
南太平洋上に浮かぶニューヘブリデス諸島(現バヌアツ)の「祖先像」は、太陽の塔のように両手を広げ、これを見た岡本さんが「太平洋の民は、昔から岡本太郎のまねをしていたんだな」と語ったとする逸話が残っている。
吉田憲司館長は「文化で世界を描く、という収集団の活動は民博の原点でもある」と述べ、特別展実行委員長の野林厚志教授は「人類の想像力と創造力の多様性を感じてほしい」と話す。
5月29日まで。水曜休館。一般420円、高校・大学生250円、中学生以下無料。問い合わせは国立民族学博物館(06・6876・2151)へ。(深松真司)