海外に住む有権者が、国政選挙でインターネットを使った投票ができるようにするよう総務省の研究会が提言をまとめることになった。投票用紙を飛行機で運んでいる現行では、投票の締め切りが国内の有権者より早く、ネット投票の導入によって国内に住む有権者と変わらない投票期間の確保をめざす。
総務省が昨年12月に設置した「投票環境の向上方策等に関する研究会」(座長=磯部力・東京都立大学名誉教授)が今夏までに提言する。2016年時点で在外邦人は134万人。うち10万人が投票可能な在外選挙人名簿登録をしている。
提言では、海外に住む人が自分のパソコンからマイナンバーカードで本人確認し、画面上で投票できるように求める。投票データはネットで国内の自治体に送られ、紙に印刷されて、自治体ごとに集計することを想定している。導入時期を明記するかは検討中で、総務省は提言を受け、公職選挙法など関連法の改正を検討する。
在外邦人は現在、大使館などで投票するのが一般的だ。公館職員が投票用紙を飛行機で日本に運んで自治体に郵送するため、投票締め切りは最も遅くて投票日の6日前。アフリカなどで公示翌々日に締め切られるケースもある。
こうした不便さもあって、在外邦人の投票率は低い。昨年10月の衆院選は小選挙区が21・16%。全体の53・68%の半分以下だ。
ネット投票は、データの改ざん防止やシステム故障時の対応など課題が多い。総務省は導入に向け、課題を解消する方策も合わせて検討していく。(平林大輔)