街頭で募金を呼びかける河田あかねさん(中央)ら=2018年4月21日午前10時2分、東京・新宿、鬼室黎撮影
病気や災害などで親を失った遺児の進学を支援する「あしなが学生募金」の呼びかけが21日、全国一斉に始まった。東京・新宿駅西口では、女性で初めて学生募金の事務局長になった三重大学教育学部3年の河田あかねさん(21)が「奨学金は自由を選択するための希望」と訴えた。
河田さんは愛知県出身。14歳の時に父が他界した。中学3年で所属していたバスケ部の引退試合直前。練習したい気持ちを抑え、自宅で夕飯作りや洗濯を手伝った。それまで専業主婦だった母も、朝から晩まで働きながら河田さんと妹を育てた。
夢はバスケットボール選手だった。高校受験時も大学受験時も、強豪校から推薦をもらったが、いずれも私立。入学費用や部活の遠征費、用具をそろえるお金がなくて、進路とともに夢も断たれた。
高校卒業後の就職も考えたが、進学があきらめきれずに勉強に打ち込んだ。「あしなが育英会」(東京)の奨学金を受けて、いまの大学へ。しかし、自分は何ができるのか、悩み続けた。
大学1年の春、愛知県であった小中学生の遺児と保護者を対象にした集いで、父を亡くした5歳の兄と3歳の妹の兄妹と出会った。兄は大工、妹はアイドル。2人は将来の夢について、目を輝かせながら語った。
「この子たちの夢を守らなくちゃ」
後輩の遺児たちにも支援が継続されるよう、街頭に立つようになった。今年3月に女性初のあしなが学生募金事務局長に。いまは教育関係の仕事に就くのが目標だ。「子どもたちが夢に挑戦する権利を守るために募金に協力して欲しい」と話す。
あしなが育英会によると、現在、奨学金を給付している遺児学生は全国に約5千人。昨年度の調査では、一人暮らしで奨学金を受けている遺児の大学生約700人のうち7割が親からの仕送りがなく、奨学金などで生活していた。
しかし、奨学金を支える募金は年々減少。2011年の約3億6600万円をピークに17年は約1億8100万円にまで半減した。寄付を募るボランティアの不足も続く。
募金活動は22、28、29日にも全国約150カ所で実施する。集めたお金は全額、「あしなが育英会」を通じて遺児学生の奨学金に充てられる。問い合わせは事務局(03・3221・7788)へ。(金山隆之介)
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〈あしなが学生募金〉 交通事故で家族を亡くした若者2人が、1967年に交通遺児の支援を始めたのが原点。募金活動は70年に始まり、民間団体「あしなが育英会」から奨学金を受けている大学生の遺児たちが毎年2回、全国各地で寄付金を集める。寄付金をもとに遺児の奨学金などを無利子で貸与。2017年までに、累計約10万人に奨学金を出している。