原油価格がニューヨーク市場で1バレル=70ドルに迫り、ほぼ3年半ぶりの高値になっている。主要産油国の協調減産が続いているほか、世界経済の回復で需要が増えている。中東情勢の緊張も原油高につながった。トランプ米大統領は「容認できない」と原油高を批判し始めたが、当面は高値圏で動きそうだ。
原油価格の指標となる米国産WTI原油の先物価格は19日に1バレル=69・56ドルと、2014年11月以来の高値をつけた。週末20日も前日終値からほぼ横ばいの68・38ドルで取引を終えた。
トランプ氏は20日朝のツイートで突然、原油高に異を唱え始めた。協調減産を続ける石油輸出国機構(OPEC)をやり玉に挙げ、「またOPECの仕業のようだ。石油価格は人為的にとても高い。良くないことで、容認できない!」などと批判した。ただ、具体策を示したわけでもなく、市場の動揺は一時的だった。
この日、サウジアラビアで開かれたOPECとロシアなどの会合では、協調減産の成功を確認する発言が相次いだ。一方で「世界中の経済が同時に改善している」(米商品アナリストのマーク・シュルツ氏)ことも投資家を強気にさせている。米国の保護主義が世界経済を減速させるとの警戒感も一時よりは後退した。
米軍などのシリア攻撃をはじめ、中東での緊張が高まる。米石油アナリストのトム・クローザ氏は「5カ月ほどはこの高値水準が続きそうだ」と話す。ただ、原油高を受けて米シェール業界は増産を続け、米国の原油生産は過去最高水準に達している。クローザ氏は「カナダやブラジルでも増産が見込まれ、来年は原油価格が下がる」とみる。(ニューヨーク=江渕崇)