中日のモヤ
(22日・プロ野球 中日3-2広島)
「失礼だけど、ここまでは期待していなくてね」。中日の森監督の声が弾んだ。この3連戦の前まで巨人と並んで最下位だったのに、首位だった広島に3連勝。立役者は間違いなく新外国人のモヤだ。
2軍暮らしだったモヤが1軍に上がれたのは、主砲のビシエドが米国市民権取得のため、渡米したから。昇格した20日の3連戦初戦で4安打、2戦目では八回に決勝本塁打。そしてこの日も3安打。三回、2死一塁からの左前安打が敵失を誘い3点目が入り、「点が欲しい場面で得点できた」と喜んだ。
身長201センチと大柄な左打ちの持ち味はボール球をあまり振らないこと。ストライクにきた直球系の球に対しては、積極的に振っていく、シンプルなスタイルだ。この3連戦で13打数9安打、1本塁打、4打点、打率6割9分2厘を記録した。
プエルトリコ出身の26歳。ドミニカ共和国で大リーグ傘下の野球アカデミーに入り、修業を積んだ。大リーグのタイガースでプレーすることもあったが定着はできず、昨季はマイナー暮らしだった。そんなモヤを、ドミニカ共和国のウィンターリーグで森監督が見いだした。
「2軍では学ぶことがたくさんあって、毎日集中していた」とモヤ。日本のストライクゾーンや配球を覚え、対応するために打撃フォームを修正。本来は外野手で、野球人生初という一塁守備にも挑戦した。2軍では打率3割7分7厘、3本塁打。結果を残し、「出番」を待っていた。
今年3月に次女が生まれたばかり。家族を米国に残し、単身赴任中だ。試合後はナゴヤドームに隣接する大型商業施設のイオンで食料品を買って自炊する。
「昨日はチキンだった。オレの料理の腕前にきっと驚くよ」。気さくな助っ人は、「活躍? 森監督だけじゃなく、きっと神様も驚いていると思う」。長身をすくめて笑った。(鷹見正之)