受賞を記念して描き下ろしたイラスト (C)野田サトル/集英社
マンガ文化に大きな足跡を残した手塚治虫の業績を記念する手塚治虫文化賞(朝日新聞社主催)の第22回受賞作が決まった。マンガ大賞は野田サトルさんの「ゴールデンカムイ」。新生賞は「BEASTARS(ビースターズ)」の板垣巴留(ぱる)さん、短編賞は矢部太郎さんの「大家さんと僕」、特別賞は「あしたのジョー」などのちばてつやさんが選ばれた。
贈呈式は6月7日、東京・築地の浜離宮朝日ホールで。マンガ大賞には正賞のブロンズ像と副賞200万円、新生賞、短編賞、特別賞にはそれぞれブロンズ像と副賞100万円を贈る。
「このままゴールまで、全力で走り続ける」 大賞の野田サトルさん
日露戦争の武功から「不死身の杉元」とあだ名される主人公が、狩りの達人であるアイヌ民族の少女と共に、隠された金塊を探して北海道の山野を行く。アクション、ギャグ、グルメ、歴史、アイヌ文化の細緻(さいち)な描写と盛りだくさん。自称「和風闇鍋ウェスタン」だ。
「栄誉ある賞をいただき感無量の思いでございます」。今月からテレビアニメも始まり好評だ。「いいタイミングでうれしい」
2014年に連載を始め、物語は現在「6合目あたり」という。「週刊連載はしんどいので、早く最終回にたどり着きたいと思う半面、残り少なくなってさびしい気もする」
軍、新選組の残党、脱獄囚らが入り乱れるバトルロイヤルには、どんな結末が待っているのか。ラストの構想は既に決まっている。
「1巻からまた読み直したくなるような、気持ちのいい大団円にしたい。このままゴールまで、全力で走り続けます」
選考経過「面白さ安定」3回目の候補で大賞
選考対象は国内で昨年に刊行・発表された作品。最も優れた作品に贈るマンガ大賞は、社外選考委員の投票(持ち点15点で1作につき最高5点)による上位10作と、専門家や書店員の推薦1位の作品を合わせ、最終選考会で議論した。
投票、推薦ともに1位の「ゴールデンカムイ」が3年続けての候補入りで押し切った。「今年こそ推したい」(里中)、「面白さが安定している」(ヤマダ)と意見がまとまった。
「BEASTARS」は「スピード感ときらめきにひかれる」(杏)、「今一番輝いている」(秋本)と支持を集め、清新な才能に贈る新生賞に。「大家さんと僕」は新生賞に推す声もあったが、「完成度が高い」(中条)、「構図も省略もうまい」(南)と評価され、短編賞に決まった。
特別賞は、18年ぶりの単行本「ひねもすのたり日記」を出したちばてつやさんに対し、「長年の業績とマンガ文化への貢献も大きい」と推す意見が委員から上がり、朝日新聞社が選んだ。
1次選考結果(4位まで)
①「ゴールデンカムイ」(野田サトル、集英社)=8点(里中5、ヤマダ3) ※関係者推薦1位
①「約束のネバーランド」(原作/白井カイウ、作画/出水ぽすか、集英社)=8点(秋本4、杏4)
③「傘寿まり子」(おざわゆき、講談社)=6点(里中4、ヤマダ2)
④「BLUE GIANT」(石塚真一、小学館)=5点(杏5)
④「MATSUMOTO」(作/LF・ボレ、画/フィリップ・ニクルー、誠文堂新光社)=5点(みなもと5)
④「蒼(あお)き鋼のアルペジオ」(Ark Performance、少年画報社)=5点(秋本5)
④「うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち」(田中圭一、KADOKAWA)=5点(ヤマダ5)
④「狂気の山脈にて」(田辺剛、KADOKAWA)=5点(中条5)
④「先生の白い噓(うそ)」(鳥飼茜〈あかね〉、講談社)=5点(南5)
④「それでも町は廻(まわ)っている」(石黒正数、少年画報社)=5点(桜庭5)(小原篤)
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第22回の贈呈式と記念イベントに読者300人を無料招待します。
野田サトルさんと作品のアイヌ語監修者らによるトークのほか、手塚治虫の生誕90周年を記念して、長女るみ子さんと矢部太郎さんの対談があります。また、受賞者が描き下ろしたイラストのポストカードなどを、会場限定で販売します。
6月7日午後6時~7時50分、東京・築地の浜離宮朝日ホールで。申し込みは郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号を明記し、メール(
tezukaprize@asahi.com
)か、はがき(〒104・8011東京都中央区築地5の3の2朝日新聞社CSR推進部)で手塚治虫文化賞事務局へ。5月9日必着。当選者には招待はがきを送ります(譲渡はできません)。
問い合わせは事務局(03・5540・7453)へ。
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※敬称略、50音順