北朝鮮に石油精製品を渡した疑いで香港船籍のタンカーが拿捕された事件を受け、台湾当局が調査に乗り出した港湾企業=2日、台湾・高雄、西本秀撮影
北朝鮮に石油精製品を密輸したとして香港船籍のタンカー「ライトハウスウィンモア」が韓国政府に拿捕(だほ)された問題で、台湾当局は2日、タンカーを借り上げた企業「ビリオンズ・バンカー・グループ」と深い関係があるとみられる台湾南部・高雄市の企業や関連先の調査を始めた。
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問題のタンカーは摘発される前の昨年9月に高雄港に寄港。入港のための申請手続きを行った代理店によると、その際、ビリオンズに代わって連絡を入れてきたのが高雄にある「盈仁(インレン)」という港湾関連企業グループだという。
台湾で経済事件などを扱う法務部(法務省に相当)調査局が2日、代理店から事情を聴いた。また、高雄港に近いビルに入っている盈仁の事務所にも2日朝に調査局関係者とみられる一団が現れたが、印刷物などがたまった郵便受けや閉まったままのシャッターを見て立ち去った。
同社と「ビリオンズ」の関係は不明だが、同じ住所で登記している海上給油や漁業関連企業が複数あり、そのうち二つは求人サイトでビリオンズのグループ企業を名乗っていた。
問題のタンカーは昨年9月5日に高雄を出港。10月15日に韓国・麗水で石油精製品を積み、同19日に東シナ海の公海上で北朝鮮の船舶などに石油精製品を移し替えたとされる。その後、11月6日に台湾中部の台中に寄港。再び朝鮮半島方面に向かい、同24日に麗水で韓国当局に摘発された。(台北=西本秀)
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韓国関税庁は2日、北朝鮮船に石油精製品を移した疑いでパナマ船籍のタンカー「コティ」を韓国西部の平沢(ピョンテク)港に抑留して調べていることを明らかにした。事実関係が確認できれば、国連制裁決議違反として、国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会に報告する。
同庁関係者は、調査中であることを理由に、石油精製品の密輸を巡る具体的な経緯や関係者を明らかにしなかった。韓国が制裁決議違反の疑いで船舶を摘発するのは前月末の香港船籍タンカー、ライトハウスウィンモアに次いで2例目。(ソウル=牧野愛博)