会見後、写真撮影に応じる三島由紀夫賞の古谷田奈月さん(左)と山本周五郎賞の小川哲さん=2018年5月16日午後、東京都港区、関田航撮影
第31回三島由紀夫賞・山本周五郎賞(新潮文芸振興会)の選考会が16日、東京都内のホテルで開かれ、三島賞は古谷田奈月さん(36)の「無限の玄」(「早稲田文学」増刊女性号)、山本賞は小川哲(さとし)さん(31)の「ゲームの王国」(早川書房)に決まった。賞金は各100万円。贈呈式は6月22日にある。
古谷田奈月さんは1981年千葉県我孫子市生まれ。2013年に「今年の贈り物」で日本ファンタジーノベル大賞。17年「リリース」で織田作之助賞。
受賞作は、旅回りのバンドを組む男ばかりの家族5人の物語。自分勝手だった父は死後も毎日生き返って家族を混乱させる。女性を嫌悪する父と、互いに縛りつけあう家族の呪いのような愛を描いた。古谷田さんは「書いている最中は本当に楽しく、生きているという気がする。一人の書き手として、男性とか女性であることを乗り越えて書いていきたい」と話した。
小川哲さんは86年千葉市生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程在籍中。15年「ユートロニカのこちら側」でハヤカワSFコンテスト大賞を受けてデビュー。2作目の本書は今年4月に日本SF大賞も受けていた。
受賞作は、クメール・ルージュの虐殺があったカンボジアが舞台。ポル・ポトの隠し子とされ、後に政治家になる少女と、神童で後に大学教授になる少年を軸に、ゲームのルールという視点で、半世紀を超える時間にわたり不条理な世界を壮大に描いた。小川さんは会見で「SFには現実に存在する問題をえぐり出す力があると思う。小説を通じてもっと遠い地点に到達できるように書いていきたい」と話した。