表彰式で笑顔を見せる寺本明日香(左)。右は優勝した村上茉愛=北村玲奈撮影
4月29日に幕を閉じた体操の全日本個人総合選手権では、男子で新王者・谷川翔が誕生し、世代交代が進んだ。一方女子では、元女王が新たな闘志をかき立てられたようだ。
「競争相手というか、今は、こんな風に(なりたい)という見本」。女子で2位に入った22歳の寺本明日香(ミキハウス)は、3連覇を果たした21歳の村上茉愛(まい、日体大)をこう評した。
1歳年下の後輩への見方が変わったのは、昨秋の世界選手権だった。村上はゆかで63年ぶりの金メダルを日本にもたらし、個人総合でも4位と結果を残した。一方の寺本は、種目別で出た平均台でよろめいて6位どまり。「自信を持っていた種目なので本当に悔しかったし、茉愛はすごいなって。(一緒に)個人総合に出たかったという思いも湧いた」と振り返る。
リオ五輪後、「燃え尽き症候群」に
昨年は、体操への情熱を見失い、迷いながらのシーズンでもあった。2016年リオデジャネイロ五輪の個人総合で8位に入り、日本勢52年ぶりの入賞を果たした。そして、いわゆる「燃え尽き症候群」に。リオ五輪直後には、東京五輪をめざすかどうか明言せず、「私を実力で抜かしてくれる子がいれば託したい」とも語っていた。
だが、リオの個人総合14位で、「託す」はずの後輩だった村上が力を発揮し始めると、寺本の心境は変わった。「茉愛が世界で金を取るとは思っていなかった。上がってきたことを認めないと、自分も強くなれない」。次第に「茉愛がいるから私も頑張れる」と心強さも感じるように。気がつけば、東京五輪を諦める気持ちは消えていた。
全日本個人総合では、3月に捻挫した右足首の影響もあり、3・502点差で2位だった。ただ、「ほとんど練習できていない状態だったので、ここまでできれば満足」ときっぱり。まずは村上とともに5月の最終選考会(NHK杯)で世界選手権の切符をつかむことが今の目標だ。「茉愛には、世界の舞台の総合で勝ちたい」。そう語り、元女王のプライドをのぞかせた。(松本麻美)