右ストレートを繰り出す辰吉寿以輝=エディオンアリーナ大阪
プロボクシング元世界王者で破天荒なスタイルで知られた「浪速のジョー」こと辰吉丈一郎(47)の次男、寿以輝(じゅいき、21)=大阪帝拳=が4月30日に大阪市内であったスーパーバンタム級8回戦で判定勝ちし、プロ戦績を8戦全勝(5KO)とした。父が世界初挑戦で王者となった「21歳、8戦目」をノンタイトル戦で迎えたが、「自分は自分」とマイペースを崩さない。
33戦10勝(4KO)22敗1分けの30歳のベテラン、石橋俊(30)=仲里=が相手だった。右、左と自慢の強打を繰り出し続けるも、石橋も足を使って防御。最終ラウンドまでもつれ込んだが、手数の多さもあり、3―0で判定勝ちした。
「まだまだですね。全然です」と試合後の本人の弁。さらに厳しかったのはリング下で見守った父の丈一郎だった。「コンビネーションと連打は違う」と強打一辺倒となった試合運びに苦い表情を浮かべた。
さらに「プロである以上、見ているものを納得させないといけない。あれじゃ金(かね)はとれない。8戦目やろ? 一人前のはずやん」と止まらない。以前から自分以上とも言われるハードパンチに頼りすぎるスタイルに心配を口にしていた。歯がゆかったようだ。
「注目、ありがたいこと」
そんな丈一郎に対し、父の昔を知るジムの吉井寛会長いわく、「おやじ(丈一郎)は天才やから」。相手を観察しながら自然に動きに緩急をつけ、生まれたガードのすき間を突くことができた。「これも経験やね」と息子をかばった。
改めて試合後の本人。「(倒そうと)気持ちが出過ぎた」と反省した。そして「自分は天才肌でない。もっと練習しないといけない」とコメントした。
父の現役時代は動画で見るといい、「『辰吉丈一郎』の偉大さを感じる」。ボクサーとしての才能を素直に尊敬する。18歳でプロになった時から、その名声と比較されるのは覚悟の上。この日も報道陣から「ジョー」の名を何度出されても淡々と受け答えした。肩ひじを張らず、卑屈にならず、「注目されるので、ありがたいこと」と考える。そんなメンタルの持ちようも、また才能だ。
次戦はこの日から2ラウンド多い10回戦で臨む予定。国内ランカーとの対戦が濃厚という。焦らず前へ進む。(有田憲一)