がま口形のブックカバー=宮崎県高鍋町上江
宮崎県高鍋町の布小物作家、別府奈弥(なみ)さん(43)が作る「がま口形ブックカバー」が人気だ。SNSを通じて評判となり、全国から注文が寄せられている。
ブックカバーは三百数十ページの文庫本がすっぽり入る。口金で閉めるため、かばんの中でほかの書類と交じって、本が開きっぱなしになることがない。「パチン」という口金を閉める音も心地いい。布は古着をほどいて使うことが多く、そのほとんどが一点物だ。
別府さんは福岡県田川市出身。夫の転勤で15年ほど前から宮崎で暮らしている。子どものころは家庭科が苦手で、友達に提出物を頼んだこともあるほど。出産を機にベビー用品を自作するようになり、楽しさに目覚め、独学でバッグやポーチなども作り始めた。
父方の祖母に可愛がられたおばあちゃん子。「おばあちゃんの匂いのするものが好き」といい、がま口もその一つ。ただ、口金と布を接着する技術が難しく、何度も挫折した。3年ほど前、がま口の小物作りに絞ろうと決心。接着剤で手をベトベトにしながら、独学で技術を身につけた。
2年前から注文を取り始め、インスタグラムなどへこまめに投稿すると、全国から世代や性別を問わず注文が入るようになった。「繊細で細やかなつくりに感激しています」「生地もしっかりしていて丈夫に作られていてびっくりしました」などと評判も上々だ。
一人ひとりとメールなどでコミュニケーションを重ね、相手の持っているざっくりとしたイメージを形にしていく。布や形を決めるまでに1カ月かかった客も。制作は平均で1日1個のペース。オーダーは3カ月待ちだ。
1個3800円から。夫からは「かかる時間を考えると、元はとれていない」とからかわれるが「喜んでもらった時に、すべてが帳消しになる」と話す。
「手作りだからこそ、宮崎にいながら全国の人たちとも交流ができる。これからも自分のペースでゆっくりと作っていきたい」
問い合わせは別府さん(0983・30・1053)へ。(伊藤秀樹)