保田さん、三上さんがデザインした憲法の冊子
どこか縁遠く感じる憲法を身近にしようと、東京在住のデザイナーのカップルが前文と全条文を載せた冊子を作ったところ、2017年度のグッドデザイン賞を受賞した。手のひらサイズで、横書きの蛇腹式。新書に挟んで持ち歩ける薄さ、軽さを追求してみた。
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保田(ほだ)卓也さん(33)と三上悠里(ゆうり)さん(33)は武蔵野美術大の同級生で、卒業後に結婚。保田さんは会社、三上さんはフリーでデザイナーとして働いている。
冊子づくりのきっかけは16年秋。前年、安全保障法制が成立するなど、憲法とのつながりで社会が大きく変わるかもしれない動きが続いていた。
2人の話題も自然と憲法のことになり、基本を学ぼうとしたが、ネットで調べると、護憲か改憲か鮮明にした勉強会が目立った。
「どちらかの立場を前提とせずに学べる勉強会をしてみたい」と母校の志田陽子教授(憲法)に相談し、憲法とは、主権者は何をする、戦争放棄の意味などのテーマと講師が決まった。
教材として憲法全条文を用意する際、考えたのは、何となく「重い」と思われている憲法を、軽く身近なものにすること。常に持ち歩けるが、書き込みの余白はとる。一覧でき、気になる条文を見つけやすい。若い世代には横書きの方が見やすい。アイデアを形にし、厚さ約3ミリ、重さ約22グラムの冊子ができた。
友人のウェブデザイナーや映像作家に呼びかけ、17年3~9月、都内で勉強会「憲法のきほん」を開催。フェイスブックなどで告知し、全7回に20~70代の延べ122人が参加した。冊子も好評だった。
勉強会で三上さんの印象に残ったのは「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない」などと定めた18条。講師の志田さんは「奴隷制がなかった日本になぜこんな表現の条文が必要だったのか、との指摘もある」と紹介し、「様々な国が経験した様々な失敗が反映され、積み上げられてきたのが憲法」と説明した。三上さんは「歴史的文脈を知ることで理解が深まった」。
保田さんは「憲法全体を理解しないで、個々の条文を変えることを議論するのは難しい」と感じた。はっきりした理由はなく、自分は護憲、あるいは改憲と思い込んでいる人が多いのではないか、とみる。「まず憲法を学び、議論の土台をつくる必要がある」と話す。
冊子を入れる封筒の表側は、「白地に赤」ではなく、淡い青地に白い丸を配置したデザイン。国の形は把握しづらいもの、というメッセージを込めた。