6日夜、マレーシアの首都クアラルンプール近郊のセランゴールで開かれた野党連合の集会で演説するマハティール元首相=貝瀬秋彦撮影
マレーシア連邦下院選(定数222)の投開票が9日に迫るなか、地元メディアでは与党連合の苦戦が相次いで伝えられ、マハティール元首相(92)が率いる野党連合と激戦を繰り広げている模様だ。野党が勝利すれば1957年の独立以来初となるだけに、与党側はなりふり構わぬ対抗策に出ている。
6日夜、首都クアラルンプール近郊のセランゴールで開かれた野党連合の集会には数千人が集まり、「変化を!」と叫んで政権交代を求めた。
民間調査機関ムルデカ・センターによると、調査したマレー半島部での1日現在の得票率予測は、ナジブ首相(64)が率いる与党連合が40・3%、野党連合が43・7%で、野党連合が3ポイントほど上回った。ただ、小選挙区の区割りや地域ごとの議席配分などを勘案すると、議席数では与党連合が上回ると予測している。
前回2013年の総選挙でも、野党連合が得票率でわずかに上回りながら、議席数では与党連合が多数を占める結果となった。
大物政治家、次々と野党支持
だが、結果は予断を許さない。今回は22年にわたり首相を務めたマハティール氏が野党に転じただけでなく、ラフィダ・アジズ元通産相ら閣僚経験者をはじめ、マハティール氏の盟友だった与党の大物政治家も相次いで野党支持を打ち出した。与党の強固な支持基盤の警察と海軍のトップも「すべての職員は自由に投票する権利がある」とフェイスブックなどを通じて表明した。
与党の地盤のサバ州でも最大与党「統一マレー国民組織(UMNO)」の副党首が新党を立ち上げ、野党連合との選挙協力で支持を伸ばしている。
瀬戸際の与党、現金攻勢も
与党の危機感は強い。5日、ボルネオ島・コタキナバルの住宅地。与党連合のロゴが入ったベストを着た女性が、すばやく男性の手に折りたたんだ薄い茶封筒をにぎらせた。中には100リンギ(約2800円)が入っている。「これはあなたのために使って」
与党の候補者側の選挙活動で、女性らが障害者がいる家庭を訪問。即席麺などの食材入りの袋を渡した後に茶封筒を配った。投票を直接呼びかけてはいないが、与党の旗を掲げていた。
地元メディアでも、与党の旗をバイクにつけてくれた人に現金を配ったり、与党の集会で高額景品のくじ引きが行われたりしている、との報道が出ている。
また、警察は2日、マハティール元首相を4月に施行されたばかりのフェイクニュース対策法違反の疑いで捜査していると発表。野党を封じ込める狙いがあるとの批判が出ている。(コタキナバル=守真弓、クアラルンプール=乗京真知)